焔の旅 -木の子-

@ebinoue

過去

きっとだいじょうぶ。すぐになおる。そうずっと思ってきた


普通の人とは違う何かがあると確信出来たのは

きっともっと前からなんだろう



僕は昔から身体が弱くすぐに怪我や病気をしてしまっていた

原因は自身の体にあるということは理解出来ていたが、家が貧しかったのもあり医者を呼ぶことが出来ず原因は分からずじまいだった。


ーーーだいじょうぶ。


弱りきっている身体にはそう言い聞かせるしかなかった



そんな生活が1,2年続いたが念を重ねていくうちに体調は良くなっていき

外で遊べるまでに回復した


しかしここ数年で新たな症状が出て不便極まりない身体になってしまった


その新たな症状というのがこの身体だ


左足が木で、身体の至る所の傷口から雑草、花、様々な"植物"が生えてきたり

この症状が現れてから僕は視力を徐々に失い、目がほとんど見えなくなってしまった


どうして視力を失ったのかは分からないが、同時に耳がありえないぐらい良くなっていた


軽く隣の民家の会話は聞こえるぐらい。


訳が分からなくなったのは言うまでもない

この異様な身体はなんなんだ?

自分がわからなくなってしまった






お母さんはそれでも僕を一生懸命支えてくれた

お金を稼いでご飯を作って出来ること全てをしてくれた



しかしこのような気味の悪い容姿の子供の親ということもあり

村の人から気味悪がられてしまった


ある時は家の花壇の花が荒らされていたらしい







僕のせいだ




お母さんに苦労をかけているのも嫌われてしまうのも全部僕のせいだ


きっとこの意思だけはこれからもずっと変わらないだろう



それにあの日のことは絶対に忘れられない、忘れてはいけない






村の人は異様なものを忌み嫌う

世界はいつもいつまでもそう







ーーーーー

ある日のことだった

僕は村の子達と遊ぶことが出来ないので部屋にこもりっぱなしだった

そんな日常でもお母さんが居てくれるだけで幸せだった




お母さんが帰ってきた矢先

慌てた様子で僕に言い聞かせてきた


「今からでも遅くない早く村から離れてどこか遠くへ行きなさい」


少し戸惑ったが

すぐに理解へと思考が変わり僕は言われるがままに逃げた





・・゜・


きっとお母さんは僕を最後まで助けるつもりだったのだろう

なにも出来なくて愚図な僕を最後まで愛してくれていたのだろう

村の人達から僕を守ろうとしたのだろう
















きっと村からものすごく離れた森の中


悲しみだけが僕に残った

一体なぜお母さんがこんな目に、遭わなければならなかったのだろうか

どうして僕はこんなにも無力なのか


悲しみが憎悪に変わったのはそう遅くはなかった








でも僕には何も出来ない、力がない

大人なんかに、世界なんかに勝てるわけがない














僕は音だけを頼りに歩くしかなかった


静かで肌寒いこの場所でただ息を潜めるしかなかった

神様はなんて残酷なんだろう


もう幸せなんかやってこない


ーー---.






















鳥達の鳴き声、徐に見えないはずの目を開ける

















微かに見える世界は緑でとても美しいものに見えた

どんな場所よりもいっそう綺麗に


















きっとこれは僕が旅をする理由の序章に過ぎないのだろう


でも理由としては相応しすぎるのかもしれない












今日も僕は誰かの為に歩く

お母さんがしたように誰かを守る旅をする






















焔の旅

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