第9話 アクションのはずなのに、戦闘までの前置きが長い件について。


ー同時刻。

「喫茶グラン」。


「目標確認。」という電話にゼノンは驚いていた。


「は?・・・・まじか。」


(何でよりによって、当たり引くかな・・・。)


「ちょっと待ってろ、今から行く。手ぇ、出すなよ?」

「・・・・・ぶん殴った。」

「はあ!?何やってんだよ・・・ッ!」

「だって襲われてたんだもん。死にそうだったんだもん。」

「・・・ッ!


(だもん、じゃねえよ!)


お前勝てんの?相手アトマーだよ?「攻撃型」だったらどうすんの?」

「だったら、早く来いよ!○○公園の第3倉庫だよ!」

「黙れ!絶対に逃がすなよ!」

「わかってんだよ!」


ガチャ。

ゼノンは電話を切った。


「すみません。少し出ます。」

「あの・・・、宮下君は・・・。」

「大丈夫ですよ。絶対に助けます。」


相変わらずうろたえる店の主人をなだめる。


カラン。とベルが鳴った。



 ▽


黒沢が吹っ飛ばされた所から、土煙が舞う。

ガラガラ。と段ボールが崩れ、土煙から黒沢が出てきた。


「ゲホッ、ゲホッ・・・・・、ッチ。お前、誰だ。」


タフだなあ。結構おもっきり殴ったんだけど。


「この僕に戦いを仕掛けるなんて、バカじゃないか?

僕はアトマーだよ?『DAYS』なんだぞ!!」


うわあ。イタイよ、お母さん。


っと、それより、宮下加恋は意識を失ってるだけみたいだ。

良かった・・・・。


「お前、僕の話を聞けええ!」


黒沢が俺に飛びかかってきた。

やばっ!・・・反応が遅れた。

殴られる・・・・ッ!


ボスッ。

グハッ!・・・あれ?


「痛くねえ。」


こいつのパンチ全然痛くねえ。

なんか、子どもに叩かれた感じ。

えっ・・・、雑魚やん。


「何だとおおお!!」


俺の呟きに怒ったのか、殴ってくる黒沢。

殴る、殴る、殴る。

・・・・が、俺にダメージなし!!

試しに俺が殴る。


「ヘバヒッ!!」


黒沢が吹き飛ばされる。


「な、何するんだ!」

「―――ねえか。」

「な、何だよ!?」

「雑魚じゃねえかあああ!!」


ー5分後。


俺は少し違和感を感じていた。

さっきからの黒沢の打撃が、強くなっていくように感じるのだ。


だが、能力を使うほどじゃない。


そう油断した時だった。

黒沢からの打撃を受けた。


・・・グフッ!!

重い!?


重かった。さっきからの拳打とは比べ物にならなかった。

おかしい・・・・。


「おかしい・・・・。って思っただろう?」

「・・・・・ッ!?」

「これが僕の能力。『乗撃ヒートアップ』!!

この能力はね、一発殴るたびにその威力が倍増される!」


そんなのありかよ・・・・ッ!


「まあ、最初に殴った人にしか効かないけどね・・。

今までで多分・・・、30発は打っているから、

最初のころの30倍だね。」


タイマンで強いってわけか・・・。


さっきの打撃、見事に溝内に入っていた。

痛いし、気持ちわりぃ・・・。


「さあ、かかってきなよ。もう君に勝機はないよ。」


嘲笑う黒沢を見ながら俺はある決心をした。


・・・・。よし。能力使うわ。


 ▽


ーレポートー


クロイツの能力は『虚紅ザ・ファントム』というものである。

能力は極端な話、ビーム《・・・》である。


SFでよくみられ、攻撃で使う粒子ビームをはじめ、

赤外線レーザーや電磁波レーザーなどを「体の一部で」出すことができる。


多くの者がこの力を恐れた。クロイツ自身も、である。

人の顔めがけて粒子ビームなんかを打ってしまったら、

大変なことになるのは誰でもわかる。


だから、「最低限使わない。」

それが、クロイツの理念だった。



 ▽


高らかに笑う黒沢。

額の青筋がヒクヒク動いている、俺。


「フハハハハ。君の勝率は0だ。

ハハハハハ・・・・は?」


黒沢が自分の足を見下ろす。

黒沢のふくらはぎには、

向こう側が見えそうなくらいの穴が開いていた。


が、焼き切れていたため、血は出ていない。


「『紅光ファング・ショット』・・・・。」


俺がそうつぶやく。

黒沢の顔は狐につままれたようだった。

バランスが崩れ、尻餅をつく。

「へっ?」と、声が裏返っていた。


相変わらず痛そうだな・・・。

俺のビーム。


「はっ!?な、何が起こった?

お、お前もアトマーなのか・・・・ッ!?

何なんだ!?お、お前は誰だっ!?」


あっ、そういえば名乗ってなかったわw


テンパっている黒沢に俺は名乗ってやった。

俺優しいからw


「『GIO』所属、序列22位『愚者』のクロイツだ。

黒沢健司、お前を『DAYS』の重要参考・・・・、

あっ、あれ?」


俺が「ネームド」だと名乗った瞬間、黒沢は泡を吹いて倒れてしまった。

・・・、白目だ。

名乗って、気絶されたの初めてだわ。

なんか、

なんか・・・、ネームドって、すっげええ!




と、いうことで「川田クエスト(勝手に名付けた)」は幕を閉じた。

ゼノンが来る前に。

やったーーーw





その後、合流したゼノンに、俺が締め上げられたのは言うまでもない。

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ATOMS ~アクションのはずなのに、前置き長い件について~ やま たろ @yamataro

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