第14話 帰還
レストハウスの中で私は目をさました
ちょうど食堂のテーブルをつなぎ合わせ、そのうえにマットレスを敷き即席のベッドがつくられその上にねかされていることに気づいた
右をむくと妻がいた。
すぐに立ち上がろうとしたが、足がなまりのように重く動かなかった。
「ご心配はいりません。奥さんはめだったけがもなく今鎮静剤でお休みになられているだけです。そのお隣には息子さんも元気にミルクを飲まれています」
声のほうを振り向くと、ワイシャツ姿を着た年配の男の人がたっていた。
「ものすごい音がしてびっくりして外に飛び出してみると、おおきなヘリコプターが煙りをあげてグリーンの真ん中で墜落しているじゃありませんか。まあ、腰をぬかさんばかりにおどろいて、とりあえずわずかばかり残っている従業員に命じてありたっけの消化器をもって駆けつけたんです」
「幸いにも手持ちの消化器を使い切る前に火を消し止めることができ、胸をなで下ろしています」
カーテンごしに日の光が差し込んでいる
「昨晩のできごとだったんですね」
「ええ、とにかく無事に助け出せて本当によかったです」
「ああ、申し遅れました。私はこのゴルフ上、いえ、元ゴルフ上といったらいいんでしょうか。そこで雇われておりましたレストランのゼネラルマネージャーです。」
カーテンの隙間から真っ白い消化器の粉でおおわれた陸自のヘリの巨大な残骸が垣間見えた
「操縦手のかたは」
私はおもいだしたように尋ねた
その真摯はおもわず顔を曇らせた
「残念ながらお二方ともお亡くなりになられました」
「お人とりのかたは出血がひどく、昨晩おそくになくなられました、もうひとりのかたは墜落の衝撃で首の骨をおられて、火を消し止めたときには
もう」
遠くで救急車のサイレンが聞こえ始めた。
「あなたがたは軍がさらに安全な場所にお連れするそうです。あれは軍の医療車両のサイレンです」
私はパイロットの死を悼むとともに、再び家族とともに生き延びることができた喜びを深く胸にかみしめ、目の前たたずむ初老の男とともに神の加護に感謝した。やっとひとときの安寧をてにいれることができた。だがしかしまだ逃避行は終わっていない。
脱出 @miyoharuki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます