第19話 写真

「ううん…ふぁー…杏奈?」


「そうだよー、おはよ、たっくん」


「おはよ、ええっと、今何時?」


「1時前だよ。気持ちよさそうに寝てたね。そんなに気持ちよかった?」


杏奈は少し意地悪そうな笑みで聞いてくる。


「うん、すごく気持ちよかった」


杏奈の太ももで寝ていたとなると少し恥ずかしくもあるが、とてもよく眠れたのも事実だ。


「うん、少しは疲れが取れたようで良かった」


「杏奈が膝枕してくれたおかげだね」


「そ、そんな事ないよ…でも…ありがと…」


杏奈は少し頬を紅くしていた。その後、週末のデートをどうするか話してから、教室に戻った。


***

俺が教室に戻ると何故か、俺を女子がニヤニヤしながら見てくる。…俺、なんかした?


「拓馬、おかえり。至福のひと時だったみたいだね〜」


「な、なんだよ…?」


なんでお前たちまでそんなにニヤニヤしてくるだよ!


「いや、だってさ、音無先輩の太ももで、あんなに気持ちよさそうに頭を撫でられながら幸せそうに寝てるんだもん。見せつけるね〜、バカップル!」


と言いながら、中庭での膝枕をしてもらって眠ってしまっている俺が写った写真を見せられた。


「う、うるさい!仕方ないだろ!なんで、写真が出回ってんだよ。それに、お前らも膝枕くらいやった事あるだろ」


「確かに、数回くらいならあるね」


「でも、流石に学校ではやらないよ。それでさ、何が仕方ないのかな〜?」


侑芽のこの笑顔、からかうのを楽しんでやがる…ちょっとムカつく。それに裕也も一切止める気が無さそうだし…


「裕也、侑芽を止めてくれ」


「ユウもみんなも気になるよね、昼休みでのことも含めて」


「おい!やめ…」


俺が止める前に、クラスのほとんどが口を揃えて、『聞きたい』やら『気になる』と口々に言い、数秒で人集りが出来上がった。


「……」


「さぁさぁ、早く言っちゃいなよ、みんな待ってるよ」


「いや、そうなった原因は、お前だからな!?」


「そんなことはいいの!早く早く!言った方が楽になるよ!」


と色々聞かれては誤魔化し続けることに全力を尽くし、時間は過ぎていった。



*杏奈視点*

「な、なに?七海、そんなにニヤニヤして?」


昼休憩の間、何か嫌な視線は感じてたけど、教室に戻ってからは、それとは違う視線を感じる。


「ふふ、いつでもどこでもラブラブしてるな〜って」


「な、なんの事?」


七海の言葉に動揺しているのが自分でもわかる


「さっきまでラブラブしてたじゃん!膝枕して」


「もういいから!わかったから!」


「あら?杏奈、今更恥ずかしがっても意味ないよ。どう?この写真!我ながらなかなかいい感じなんだけど」


と七海が見せてきたのは、たっくんに膝枕をしてあげながら、頭を撫でている写真だった。


「な、なんで勝手に撮ってるの!消しなさい!」


「えー、嫌だよ!それにいいの?こんなのもあるんだけど」


次に、見せてきたのはさっきの写真のたっくんをズームした写真。…寝てる時のたっくん可愛い、欲しい、スマホの壁紙にしたい!


「杏奈、欲しい?」


「…欲しい」


「そっかー、じゃあ、さっきの写真は消さないからね」


「な!それもダメ!」


「ワガママだな…まあ、何を言ってもどっちかだけだからね〜。それで杏奈はどっちにするのかな?」


「うぅ…」


私は、悩みに悩んで結局、自分の欲に負け、たっくんの写真を貰い、直ぐにスマホの壁紙に設定。


「たっくんが近くにいる。んふ、ふふ〜ん」


「これは、重症ね…」


近くで見ていた梨沙はまたまた呆れている。


「うん、私も、ここまで大好きオーラ全開にするとは思わなかった…」


と七海も併せて、ほとんど全員が私の今の姿を見て呆れるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

初恋相手が彼女(彼氏)になりました! しまドン @Takufumi0827

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ