手を掴んで!

羊草

第1話

私の母は私が産まれてすぐ、私に触れた後に亡くなったらしい。だから、私は母との交流は一瞬だったと聞かされた。




オギャー,オギャー………………


「赤ちゃんが産まれましたよ。お母さん。」


「元気な女の子です。」


その時、母は既に顔色が悪かった。だから、焦った。お父さんも、看護師さんも。助産師さんも。


「お母さん、大丈夫ですか!随分、顔色が悪くなっています。」


「何か欲しい物はありますか?」


「もう少しの辛抱ですよ。」


「お水、持ってきました。」


ゴク,ゴクッゴクッ。


「そんなに喉が乾いていたのか」


「私の………赤……ちゃ…………ん、……」


「私の………………赤ちゃん………………に…………さわらせて。」


「連れてきましたよ。お母さん。本当に大丈夫ですか?腕の立つ医師を今、連れてきてるのでもう少しの辛抱ですよ!」


「私の………赤……ちゃ…………ん、」


ニコーッ、とお母さんが笑いかけて、私に触れようとしてくれた。その時も、お母さんは弱っていき、力尽き果てそうになっていた。その赤ちゃん、私はお母さんを求めて、大きなお母さんの手を小さな私の手で掴むとお母さんは、一筋の涙を流し、そのまま、亡くなった。


「だからね、お父さんは、お母さんが遺してくれた、ゆいがとても大切なんだ。」


「お父さん、泣いてるの?」


「そうだね!泣いてるね!結には涙を見せないって決めてたのに、お母さんも、お父さんも、涙、もろいみたいだね。」


「大丈夫だよ。結がついてるから。泣いても良いんだよ!私、強い子だから!」


「そうだね、結は強い子だね。それにお母さんに似て結いは真っ直ぐな心の優しい子だもんね。」


「うん!それにね、結、お父さんみたいに頑張り屋だよね!」


お父さんはその後もなき続け、夕方になるまで、私は待ち続けた。すると、


「そろそろ、帰ろうか!今日はお母さんにみっともない姿をさらしてしまったね。それに結も待たせてしまったし、今日の晩御飯、腕を振るうよ!」


「結、ハンバーグが良い!」


と言って、お母さんのの命日のお墓参りが終わった。


私はこののお母さんの命日に隣のお父さんを見ながら、あの時のことをふと、思い返していた。


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手を掴んで! 羊草 @purunn

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