第7話 羽化

無断欠勤が続いたため、会社から捜索願いが出され、警察が住居に入ったところ孤独死しミイラ化した男性の遺体が発見された。それ自体はさして珍しいことではない。

ただ現場検証に入った警察官は彼の部屋を一面に覆った編み物と、中心に据えられた繭のような謎のオブジェを見てこれは一体何かと訝しんだ。 繭には食い破ったような跡があるだけでもぬけの殻だった。  


警察はこの男性が精神を病み、オブジェを作って衰弱死したという報告で締めくくった。



ハチには寄生するものがたくさんいる。その中の一種クモヒメバチはどういうわけか寄生相手のクモに近寄り、捕食されずに麻酔をかけて一時的に眠らせ、クモの体表に卵を産み付け、生まれた幼虫はクモの体液を吸いながら成長する。幼虫にとってクモは食料であり、自分を守ってくれる存在となる。寄生されたクモは普段通りの生活を続け、普通に成長もできるが、成長した幼虫はクモを操り出し、クモヒメバチの繭を保護するような網を張らせ、最終的に吸い尽くして殺し、クモを操って造らせた安全な巣の中で繭をつくり、そして成虫になる。寄生されたクモがどうやって操作されているかはまだ解明されていない。


寄生蜂が寄生する間,寄主が生きている場合を専門用語でコイノバイオント(KOB)という。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

みなさんは虫です 頓服 @alchemistonpku

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る