16の王
@youly
第1話 「兎の王」・「茸の王」
「奇怪な場所だ....。」
「兎の王」はそう言った。
王といっても国を治めているわけではない。16の「力」に優劣を付けるための闘いに選ばれた戦士に与えられる称号だ。彼の場合、16ある「力」の1つ「兎」の力を与えられた戦士だから「兎の王」と呼ばれているだけである。
もっとも、その名を口にするのは16の「王」だけだが。
その「兎の王」が奇怪だと思ったそこは、窓が無く所々ヒビや崩壊したビルが並ぶひとけの無い廃れた都市であった。しかし、それだけでは感想は不気味で済んでしまうのだが、道路やビルの大半を白い糸が覆っていて所々に赤黒く膨らんだ何かがあった。
「奇怪で悪かったな。」
前方から、姿が見えないほど遠くから声が聞こえた。
「そんな遠くから話すのは失礼じゃないか?私の耳が良くなかったら聞こえてないぞ。」
そう「兎の王」は返す。
すると例の赤黒く膨らんだ何かがさらに膨らみ人へと姿を変えていった。
「ほう。貴様も王か。私は兎の王、俊足たる兎!!」
「俺は茸の王、狡猾たる茸。」
「茸の王」が言い終わると同時に「兎の王」の持つ矛が「茸の王」の喉に突き刺さる。すると「茸の王」の体が崩れ白い糸になっていった。
「貴様はどうしたら死ぬ?どうすれば殺せる?」
赤黒いキノコが形を変え喋った。
「さぁね。教え....。」
今度は言い終わる前にさっきまでキノコだった物に矛が深々と突き刺さる。
「....!抜けん!」
「兎の王」は慌てて矛を引き抜こうとするが微動だにしない。
「矛に返しを付けたのは失敗だったな。」
気付けば足が白い糸・・・菌糸に覆われ逃げることができなくなっていた。
「終わりだ。」
「茸の王」がそういうと1つのビルに覆われていた菌糸が無くなり身動きの取れない「兎の王」の方へとビルが崩れ落ちてきた。
「・・・・・・・・!!」
辺りに悲鳴と笑い声が広がり、「兎の王」は敗れ、「茸の王」は満足げに笑った......。
16の王 @youly
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