第38話 エピローグ


 結局は起きたのは昼過ぎでマスラは遺跡についての報告をすることで報酬が貰えた。

 三人は居酒屋『赤木屋』にて酒を飲んでいた。

 エミナが不思議そうに尋ねる。


「そんで、その本は提出しなかったの? 」

「一応、報告はして所持をチェックしてもらっただけ」

「そういうのは良いの? 」

「遺跡発掘のために資料を所持するのが許されるのも正規トレジャーハンターの特権」


 こう言った長所もあるので、みんなトレジャーハンターになりたがるのだ。

 遺物の所有権が認められるので登録などは必要だが、言い換えれば所持可能である。

 これが、一般人になると所持は許されるものの、返還命令が来たりと色々とややこしい。

 マスラがおちょこの酒を飲みながらぼやく


「しかしまあ、終わってみれば色んな謎が残ったな……」

「そうだね……特に他の大陸の話は……」

「トルパス。迂闊に話すなよ? 」

「ゴメン……」


 大陸が他にもあると言う事実は彼らしか知らない。

 迂闊な扱いは危険なのだ。

 ちょっと反省しているトルパスの蜘蛛頭をぽんっと叩く男が現れた。


「口が軽くちゃアリトーはやっていけないぜ? 」

「オットー爺さん! 」


 六本腕の真ん中の右手をひらひらさせて座り、ウェイトレスのお姉さんに修羅コーラを注文するオットー爺さん。


「中々面白い事件だったな」

「さすがに爺さんは余裕だな」


 マスラがにやりと笑いかける。

 元ベテランのアリトーでもあるオットーには流石に余裕だったらしい。


「俺が気になったのはどちらかと言えばマスラの変貌ぶりだな」

「変貌? ああ……あれか……」


 言われて何のことかわかるマスラ。

 奇妙な変身をした事である。


「人間とは思えねぇ不思議な力を見せた。あれは修羅でも出来ねぇし、恐らくは魔法や科学でも出来んだろう」

「えっ? えっ? 何のこと? 」



 エミナが不思議そうな顔をするがトルパスが「後で教える」とだけ言って黙らせる。

 マスラも困り顔で後ろ頭をポリポリかく。


「よくわからんけど『解放者』って能力らしい」

「なんだそれ? 」

「俺もよくわからん」


 かいつまんで死霊青年との話をするがオットーは首を傾げる。


「なんだかよくわからねーが聞いたこともねーな」

「俺もだ」

「まあ、ちょっと色んな奴に聞いてみるよ」

「お願いします」


 そう言って頼むマスラ。

 すると、奥から声が聞こえた。


「めでてぇなぁ♪ めでてぇなぁ♪ なんか知らんがめでてぇなぁ♪ 」


 あのメモを渡した「めでてぇおじさん」が現れたのだ。

 前回と一緒で褌一丁の半裸で踊っている


「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」


 それを見たマスラとトルパスとエミナの三人が半眼になった。


「なんだぁありゃ? 」


 オットーも不思議そうな顔になる。

 おじさんは踊りながらこちらへと向かってきた。


「おっ? この前のお兄さんじゃないか! どうだい? あのメモは役に立ったかい? 」

「おかげさまで大冒険出来ましたよ」


 皮肉気に返すマスラ。

 だが、めでてぇおじさんは笑った。


「そいつぁめでてぇなぁ♪ お兄さんは良い道を選んだんだよ? 」

「良い道? 」


 訝し気になるマスラ。

 おじさんは笑って言った。


「やった後悔よりもやらなかった後悔の方が大きいんだ。あの時お兄さんが行かなかったら、お兄さんはきっと幸せな家庭を築けなかったよ? 」

「幸せな家庭? 」


 ますます訝しむマスラ。


(どっからその話が出てきたんだ? )


 話の辻褄があっているようであっていない。

 だが、変な説得力があった。


「お兄さんはきっとチャンスを一切掴めない臆病なまま、アリトーを終えていたよ。そうならなかったら、おじさんはめでてぇんだよ! 」


 そう言って再び踊りだすおじさん。


(何が言いたいんだ? )


 酔っ払いには何言っても無駄だとわかっているがそれにしてもよくわからない。

 するとおじさんは再び褌に手を入れた。


「そうそう!また、面白い遺跡を見つけたんだ! 今度は学園都市カルコスの近くにある森に変な地下階段見つかったんだよ! 行ってみるかい? 」


 そう言ってメモを渡そうとするおじさん。


「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」


 4人全員が絶句する。

 オットーもこのおじさんが今回の原因らしいと気づいたようだ。

 だが、マスラは迷わずメモを受け取る。


「良いねぇ。また行ってみるよ」

「ありがたいねぇ! 」


 おじさんもにっこり笑って再び踊りだす!


「めでてぇなぁ♪ めでてぇなぁ♪ なんか知らんがめでてぇなぁ♪ 」


 裸踊りをしながら去っていくおじさん。

 後に残された4人は呆然とする。

 最初に口を開いたのはオットーだった。


「あれが今回の事件を起こした元凶か……」


 それを聞いてトルパスも苦笑する。


「一体、何者なんだろうねぇ……」


 トルパスも不思議そうだ。


「絶対にこの遺跡もなんかあるよね……」


 エミナも苦笑しながらマスラが貰ったメモを見る。

 マスラは苦笑しながらメモを前に出して言った。


「嫌なら俺一人で行くけど、みんなはどうする? 」


 それを聞いて三人は苦笑した。

 まず最初にトルパスがマスラの手に合わせる。


「行かないわけないだろ? 」


 するとオットー爺さんもその手の上に合わせる。


「何とか休みとって行くよ」


 最後にエミナはオットー爺さんの手の上に合わせた。


「今度はもっと準備するから。役に立って見せるわよ」


 それを聞いてマスラが笑った。


「じゃあ、みんなで行こうか? 冒険の旅へ! 」

「「「おう! 」」」


 そう言って4人で笑いあった!


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絶界の虚帆 世界の解放者 剣乃 和也 @asayan

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