第37話 美女の正体


 翌日の昼


 三人はようやくオブニーコスへと戻った。


「ふわぁ……ちかれたぁ……」


 エミナはフラフラしながら、家へと向かう。

 それを見て苦笑するマスラ。


「だらしねぇなぁ。オットー爺さんなんて昨日のうちに帰ったんだぞ? 」

「修羅族のたくましさと比べないでよう……」


 口を尖らせてぼやくエミナ。


 オットーは「仕事があるから」と先にバイクで帰ったのだ。

 修羅族はタフとは言え、あれだけの冒険をしてからも帰る余力があるのだから凄い。

 そこでマスラはふと気づく。


「そういや、あの狐耳の巨乳ねーちゃんは? 」

「あの女ならいつの間にか居なくなってたわよ。マスラが見つかるまでは待っていたみたいだけど……」


 どうやらいつの間にか消えたらしい。


「しかし、俺も疲れたな……そろそろ休むか」


 そう言って、家に入ろうとしたその時だった!


「さぁ、今話題の栗金巾着のお店『シデン』のダチア店! 今日オープンですよ! いらっしゃーい! 」


 和風メイド服を着たお姉さんたちが通りにティッシュを配りながら歩いている。

 それを見てエミナは目を輝かせた!


「ええ! 今日オープンだったの! 行かなきゃ! 」


 そう言ってフラフラとそのまま出ようとするエミナ。

 その肩を押さえるマスラ。


「そんな体でどこ行こうってんだ? 」

「うう……だって、中々ダチア区に出店してくれない美味しいお菓子のお店なのに……」

「今日オープンなら明日もやってるだろ? 」


 マスラがあきれ顔になっていると狐耳のお姉さんたちの一人がひと際大きな声で呼びかけた。


「さあさあ! 今日はオープン記念で人気の栗金巾着が半額だよ! よってらっしゃい見てらっしゃい! 」

「ほら! 今日だけ半額だって! 」

「明日奢ってやるから休めって! 」

「うう……」


 泣きそうなエミナだが、トルパスがトントンとマスラの肩を叩く。


「マスラ……あれ……」

「何だトルパ……ス……? 」


 不思議そうにトルパスが指さした方を見るマスラだが、その顔が凍り付く。


「さあさあ! 今話題のシデンのダチア店オープンだよ! さあみんな来ておくれ! 」


 狐耳の巨乳美人が呼び込みのメイドさんをやっていた。

 というか完全にマスラ達を襲ってきたあのお姉さんである。


「栗金巾着の店シデン! 」

「美味しいよぉ! 」


 よく見ると機人と魔人の二人もサンドイッチマンとして出ている。

 ちなみにサンドイッチマンとは体の前と背中に広告を着けて歩く宣伝手法の事で某芸人さんの事ではない。


「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」


 幸いにも向こうは気付いていないが、こちらは完全にわかった。


 宣伝をしていた一団はそのまま通りを過ぎて去っていく。

 それを見ていた三人は誰ともなく言った。


「とりあえず行くのは止めよう」

「そうだね」

「寝ようぜ」


 三人はそのまま部屋に戻って寝た。


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