記憶になくとも脳は忘れていない

第1話

「ドカーン!」

突然の爆発音と共に目が覚めた。

何があったか気になるため、急いでベットから起き上がり、玄関に向かい外に出る。

 音がなった方を確認すると、この市で最も大きいショッピングモールが、真っ赤に染まった大蛇に飲み込まれているように燃えていたのが見えた。

 その光景に人々が泣き叫ぶ姿、絶望に項垂れている情景を目の当たりにした。

 まるでRPGの世界で町にラスボスが出たときのような。

 時間が経つと颯爽と勇者たちが登場し、ラスボスに対して攻撃していくが、ラスボスはそれを気にせず建物ごと人々を飲み込んでいく。

 ついにはすべて飲み込み、満足したようにラスボスは帰っていった。

 そこにはあったはずの大きなショッピングモールが先程まであった場所から消えていた。

 この一連の流れを突っ立って見ていることしか自分には出来なかった。

 目の前で起きた出来事に圧倒され、何もせずにただ突っ立っている自分の耳には人々の叫喚が響かないが、自分の心には嫌になるほど響いてくる。

 先程の出来事から数十分はたっただろうか、まだそこから動くことができていない。

 大きなショッピングモールがあった場所には立ち入り禁止のテープが貼られ、捜査に来た警察以外に人は誰もいなくなっていた。

  先程の光景が未だに起こっているのではないかという錯覚に陥るほど頭に焼き付いている。

 一生忘れることはないだろうと思うくらいの衝撃、それ以上にひどい罪悪感に見舞われている。

 何故なのか、それは自分でもよく分からない。

 しかし、今まで受けたことの無い耐え難い罪悪感が襲いかかってくる。

 まるで、爆破テロを起こした犯人が自分だということを、自分の中の何かが思ってしまっているような感覚。

 ああ、何故思ってしまうのだろう。

 爆破によって死んでしまった人に申し訳ないと。

 ああ、何故思ってしまうのだろう。

 爆破によって死んでしまった人の家族に申し訳ないと。

 自分には爆破テロを起こした記憶もないし、起こそうと思った事もない。

 だから、この爆破テロを起こした犯人は自分ではないと言える筈なのに自分の中の何かがそれを否定してくる。

 ああ、早くこの覚えの無い罪悪感もこの辛い気持ちも忘れて楽になりたい……。

 そう思った時、プツッと何かが消えてしまったそんな感覚を感じる。

 激しい頭痛に襲われ、苦しんでいたが、すぐに痛みは引いていった。

 痛みが引き、周りを見渡すと何故か自分は外にいた。

 何故自分が外にいるかは分からないが、どうせ外の空気を吸いたいなどという、さほど重要ではない事だろう。

 ぐう〜っと腹の虫が鳴った。

 お腹が空いたなぁ、家に戻ってないか食べるか。

 そう思い、家の中に戻った。

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記憶になくとも脳は忘れていない @amazakura_midori

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