伝言歌

南いおり

第1話

私には好きな人がいる。

私と「あなた」はクラス替えがないクラスにいるため、3年間一緒だった。1年生のときに席が近くなったことがきっかけで仲良くなり、今では二人でご飯に行けるようにもなった。でも「あなた」は私のことを恋愛対象として見ていない。仲のいい女友達、もしかしたら男友達に見えているかもしれない。だからクラスの何人かが大学合格の内定をもらい、卒業に向けては動き始める時期まで来てしまった。私に告白する勇気がなかったから。


ある日クラスのバンドのボーカルの健太が話しかけられた。彼は「あなた」の親友であり、私が「あなた」を好きなことを唯一知っている人物だった。


「告白しないの?」


彼の第一声はそれだった。


「勇気ないし。向こうは私のことなんとも思ってないから…」

「そうでもないかもよ?」

「もしそうでなくても、告白なんか絶対できない!」

「…じゃあ、歌にしてみる?」

「え?」

「歌詞だったら、好きとか普通に言えるじゃん?だから歌を作って、それをあいつに向けて歌う!どう?」

「いや、作った歌、本人に歌うとか無理!絶対できない!」

「じゃあ普通に告白する?」

「 それは…健太って作曲とか作詞とかしたことある?」

「あるよ。バンドの時歌ってたやつ」

「…じゃあ…手伝ってください!」

「いいよ。じゃあ作るか」

「ありがとう!」








そうして卒業式の前の日、「あなた」を呼び出した。そして健太がギターを弾き、私が歌を歌った。緊張で声が震えていたけど「あなた」に気持ちが届いたらしい。そうして、私たちは遠距離恋愛になった今でもこの歌を歌っている。








"伝言歌"

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伝言歌 南いおり @minami_iori_373

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