長い耳の男が言うには
長い耳の男が言うには
・その巫女は未来を見ることができる
・岡本含む男子生徒は巫女のおかげで回収出来た
・巫女は長い耳の部族では神のように崇拝している
との事
「神…?」
「あぁ、我々は神を信仰し、巫女殿は神の使いだと信じている」
歩く廊下は洞窟で変わりないのだが、むき出しの土は見えず、宮殿を思わせるような蒼色の光を放った、横にお相撲さんが10人、両手を広げ並べたら届きそうな廊下だった
「巫女殿、“セイト“のオカモトを連れてきました」
薄い垂れ幕の向こう側で、少女を思わせるようなシルエットがちょこんと座っているのが見えた
だが、正面を向いているのはわかったが特徴的な長い耳が無かった
「良い、下がれ…看守の…」
「ハッ!私の名はエル・クシナ・オカランスであります!」
「オカラだったか、下がって良いぞ。岡本と話がしたい」
ん?
「承知しました。オカモト、失礼のないようにな」
名前を初めて知ったエルフのオカラさんは、そう言い残し垂れ幕とは逆方向にダッシュで逃げ帰った
「巫女殿…?僕の名前ののイントネーションが──」
「はぁ━━━━━━━━━━ッ!疲れた━━━━━━━ッ!」
垂れ幕の向こうの巫女が、僕に向けられた第一声が堕落だった
なにこの子?
「え、えと…僕悪いことしましたか?」
「んにゃー、別にー…あ、岡本くんだっけ?前居たとこ、どんな場所か教えてよ」
前居たとこ…異世界に来る前の世界だろうか?
「あ、垂れ幕邪魔だね…よいしょ」
下がっていた垂れ幕が上がると、そこに居たのは一切比喩なしにダラけまくっていた、腹をボリボリと掻くズボラな黒髪の少女だった
「え、ええ…巫女のイメージどこに行ったの」
「その巫女ってのやめてくんない?長い耳のヤツらが勝手に言ってるだけだから…あぁ一つだけ言わなきゃいけないことあったんだ」
一つだけ…なんだろうか?
「今回男子生徒だけだったけど、殺しちゃってごめんね?…いや、ごめんなさい」
姿勢をただし、頭を下げる少女に僕は手を横に振る
「い、いやそんな気にしてないからいいよ!」
「ん、なによ…?私の頃より人類は衰退したのか?」
「何の話か知りませんけど、僕はクラスメイトとは仲良くなかったので…」
「なんだ、そうなのか…そういえばイントネーションを疑問にしたな、答えてやろう」
少女はテレビの電源を入れる時に使われるような長方形の黒い物体を取り出し、赤いボタンを押した
すると少女の寝転がる後ろの床が開き、デスクトップモニターが上に2つ、正面に3つの計5台が鎮座され、その背後でハードディスクとネット環境に必要な機器が並べられる
これじゃまるで────
「管理してるみたいでしょ?」
「え、えぇ…てっきりファンタジーの世界かと…近未来異世界ファンタジーなんですね」
「んあ…まぁそんなとこかな?正解いうと私にもペナルティあるし…答えは自分で探してね…っと、私も元前の世界の人でね」
最後の言葉で納得した
この人も前の世界の人間だということ
そして少女ということは最近来たのだろうと予測した
「ちなみに私はここに来て100年経つけど、歳取らないから」
「え?!お、おばあちゃん!?」
予測が外れた…ファンタジーよろしくな世界じゃないか
「ババアいうな!いや、間違いではないけどさ!?」
「人類が衰退したってそういう…」
「あぁね、私の頃はみんな外見は仲良くしてたから。殴り合いの喧嘩は常識なくらい」
つまり、やんちゃしてたってことかな
「その…後ろの機械で僕達を管理しているの?」
「違うね、私の管理しているのは特定の領土と耳長の住人だけだ。偶然にも君たち“生徒“が私の領土に侵入してきたものだから拉致行為をさせてもらった」
「ら、拉致って…」
「実際そうだったろう?無抵抗の人間を、武装で無力化させて牢屋に監禁させたのだ。違うか?」
少女の言う通りだった
僕も出会い頭に頭を何かで殴りつけられ一時的に気絶させられたのだから
「あ、合ってます…」
「この世界に来たということは、何かしら能力、君たち世代だと“スキル“と言えば分かるかな?それを身につけてこちらに来るのだ」
スキル────ファンタジー特有の人智を超えたモノであり、救済でもあり、破滅をもたらす力だ
と、思う
「スキルとは言ったものの、そういった能力には差がある。私ならば『チャンネルひとつで5台のパソコンと2つのハードディスク出現させて歳を取らない』ことができるようにね」
「2つなんてあるんですね…あと、後ろの機械はスキルだったんですね」
「私のように視覚化出来るものならばまだ良い方だよ、大空 翼くんを見た?」
「あ、はい…」
「彼のスキルは『瞬間記憶』だ、こちらのアホ耳長が気を許し、地図を一瞬見せたおかげで彼は完全に洞窟内を網羅したからね」
「翼君は努力家で…覚えることに関しては何度も往復してたって」
「その努力が実ったのだろうね──彼のスキルとして」
欠点を補う、のがスキルだとすれば…
「スキルというのは欠点を補う他に、欠点を増幅させることがあるのだ」
「え、えと、それって」
「佐々木という生徒がいたな?アイツは体重をコンプレックスにしていたそうだ。長耳達はデブひとり持ち上げるのに苦労はしないのだが、しかしどうだ?持ち上げることすら出来なかっただろう?」
少女の言うことが本当であれば、長い耳の男たちには筋力があり、巨漢でも難なく持ち上げることが可能らしい
だが、あのデブ佐々木を持ち上げることが出来なかったとなれば、欠点を増幅させるというのは理にかなっていると考えれる
「私がいる限り、殺しはご法度なはずなんだけどね…長耳達と私の考えは差があるから、彼らの独断が先行する場合があるのよ」
「その結果が逃げきれなかった生徒たちの虐殺ですか」
「そこを突かれると痛いんだけどね、鈴木君の件も申し訳ないよ」
改めて頭を下げられるが、過去の僕からすれば生きていようが死んでいようがどうでもよかった
「あぁ、どうでもいいって顔してるね…岡本くんは冷酷だね」
「人間、早かれ遅かれ死にますし、そういう環境に育ったので…」
「あー…私の周りにもそういう人間いたけど、自分を呪って死んじゃったなぁ」
────自分を呪って死んだ、か
「────君はどっちだろうね」
「え、ええ?」
「欠点を補うか、増幅するか…決めるのは他人じゃなくて自分自身だから、それだけは覚えておいて」
「は、はい…えと、これから僕どうなるんですかね?」
言われたことがピンと来なかったので、話を変えることにした
というより、重要なことに切りかえた
「僕はあなたの元で雑用でもすればいいんですか?」
「それでも良いんだけど、それだと必死になって全員生かすからね〜」
楽をしたいならば全員で雑用させる気だったらしい
「じゃあ何故────」
「君がこの世界にどう変化していくかが気になってね、傍観者くん」
傍観者と言われ、胸が痛く締め付けられた気がした
人の生死には興味がなかったが、ファンタジー世界だとすれば法など存在しても適用されないかもしれない
黒が白に──
「期待してるよ、傍観者の岡本くん」
言われた瞬間────
────視界がホワイトアウトした
“ちょっと早過ぎない?“
“歳食うと長話したくなるのは本当のようだな“
“そんな時間経ってたの?“
“こちらの準備が万全の状態になるまでな“
“……この子、どこに飛ばすの?“
“法が安定しない場所なら楽しめるだろう?“
“…あっそ“
クソ弱岡本くんは仲間意識がないので自分以外は消耗品です 黒煙草 @ONIMARU-kunituna
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