ハイレベルの頭脳を持つ高校生たちがクイズバトルでぶつかり合う、並外れた知性と瑞々しい若さが渦巻き氾濫するような物語です。
児童養護施設出身者である男子高校生、影浦瑛。彼の恋人であり、並外れた頭脳と美貌を持つ大城優梨は、優れた頭脳を持ちながら学費がなく大学進学を諦めている景浦をなんとか進学させたいと考え、TV局の行う「全国高校生知力甲子園」で優勝することで賞金を得、彼の学費に充てることを思いつく。
そんな目論見を隠しつつ、クイズに参加するチームメンバーを募り始めた優梨だったが、実はそのクイズ番組の裏では思いもよらぬ巨大な何かが動いているようで——。
参加してきた高校生チームは皆全国トップレベルの頭脳の持ち主。中でも沖縄代表チームのリーダーである桃原千里は、非常に優れた頭脳と美貌を持ちながら、かつて優梨との頭脳対決に敗れた苦い経験があり、今回はそんな優梨へのリベンジに執念を燃やしての参戦だった。
それぞれに強い思惑を抱きつつ臨むクイズバトル。そして、この番組の裏側に潜む巨大な目論見が少しずつ見え始める——。
物語の中で繰り広げられる様々なクイズと、それに挑む高校生たち。この上なく巧みに練られたそのクイズの内容と、全力で難問に取り組み回答を見つけ出していく彼らの尋常ではない頭脳に、読み手は完全に引き込まれ、圧倒されます。そして、このクイズシーンを凄まじいとも言える熱量で描き出す作者様の緻密な思考回路に、深く感嘆せずにはいられません。
現在第4章までを拝読したところですが、物語はここからいよいよ決勝戦に突入していきます。このクイズの裏にある企みも、ここから次第に明らかになっていく気配がしています。スリリングな熱を増していくストーリーから目が離せません。
この物語には、読み手を大きく揺さぶる結末が待っているに違いない。そんな予感を抱きつつ、最後まで手に汗を握りつつ拝読したいと思います。
今までにありそうでなかった、高校生たちのハイレベル頭脳戦を描いた本作。登場人物たちは作者様の代表作にして処女作の『深緋の恵投』や、そのスピンオフ作品である『慧眼の少女』の主人公たちだ。もちろん、この二作品を拝読していない方も、十分に楽しめる仕掛けが沢山ある。
主人公の天才的美少女は、彼氏を大学に行かせるために、高校生が参加する知力甲子園に参加する。目指すは優勝だが、優勝賞品は金銭ではなかったため、何故知力甲子園の優勝が、大学進学につながるのかは謎だ。
そして水面下で動きを見せる、権力者たちがいる。主人公の彼氏はわけあって児童養護施設にいるのだが、そこに政治家がわざわざ現れ、彼を激励する。そして、知力甲子園の主催者が、今年度から急に変わったのだ。
さらに、開幕した知力甲子園のハイレベルなクイズの回答に、主人公はある規則性を発見する。しかし、その規則性もあるものに当てはまりそうで、当てはまらない。
知力甲子園には、主人公のライバルの少女も参戦している。その少女は主人公に決勝で勝ちたいがために、主人公のチームを助ける余裕さえ見せる。
本格医療ミステリーの代名詞とも言える作者様の、最新作。
クイズ大会という表舞台で繰り広げられる策略と人間関係も見どころだが、ミステリー作家の作者様ならではの、水面下の謎解きも期待される。
是非、御一読下さい。
レビューを書くか非常に迷った。
どういう経緯かは忘れたのだが、筆者さんの「ミックスベリー殺人事件」を僕は直近に読んでおり、WEBで読めるミステリとしてはなかなかすごいものだなと感心して、今回の作品についてもフォローさせてもらった次第である。
しかしながら現時点での読者の食いつきを見る感じ、どうしてやはり序盤でとっちらかった感が強い。
自身がミステリなぞろくすっぽ書けぬ下手糞であることを棚に上げて言わせていただくが、明確な主人公が存在せぬまま複数の視点に切り替わり、時系列もともすると不明瞭で、印象的なエピソードもこれといってないという体たらくのため、キャラクターたちの造詣を印象付けることも掘り下げることもできない序盤というのは、なかなか読む人の心をくじくものがあり致命的である。
実際僕も何度か投げ出しそうになった。
ではなぜここまでたどり着き、こうしてレビューを書いているかといえば、僕は漫然とその辺りを読んでいた(流し読みしていた)ので、幸運にもこうしてたどり着いたかなという感じである。この辺り、一読者である僕があれこれというのはおかしい(まして審美眼も無い)とは思いつつも、余力があるのであれば筆者には手を加えてもらいたいと願っておく。
さて、なんでこんなことをわざわざ念書のように冒頭に書くかといえば、おそらくこれを読もうと思った読者の多くがこのままでは感じることだからであり、その先に待っているものについて言及する際の説得力を増すためだ。
面白い。
間違いなくこの作品は面白い。
何が面白いかといえば、真に迫ったクイズバトルである。
昨今、クイズ番組はバブルというほど巷に溢れかえっているが、そのツボをしっかりと押さえた内容。あるいはそのどれにも当てはまらない、あっと驚くような思いもよらなかった内容。そして、それらを攻略してみせる主人公たちの知恵・思考・駆け引きである。
前作を読ませていただいて感じたが、筆者さんはこういう造り込みが極めて巧い。構成力(ストーリーではなく設定などの緻密さ)に作家性の全てを振っているのではないかと思わせるくらいに、綿密に世界を構成してからそれを小説に描写されている。だからこそ、あぁ、これって実際にありそう&あったら絶対面白いと思えるのだ。
もう一つ。
やはりミステリモノの醍醐味である駆け引きの妙だ。
登場人物たちが一堂に会すると、上に書いた致命的な欠陥は嘘のように霧散した。連綿として紡がれるストーリーの中で捉えやすくなったキャラクターの像は、白熱するクイズバトルと共にぐいぐいと僕をひきつけてくれる。そして、今ひとつはっきりとさせることができなかったそれぞれの思惑――駆け引きが何を意味するのかが、人間が持つ根源的な知的欲求をこれでもかと刺激してくる。
僕はもうそれに完全に絡めとられていると言っていい。
明らかに主人公たちを決勝へと導こうとしている大会運営。
不自然に絡んでくるライバル。
そして伏せられた主人公たちの過去と因縁。
作中でクイズ大会が開催された頃から、俄然面白くなってきたこの物語が今後どういう結末を迎えるのか。口が酸っぱくなるほど言わせて貰ったとおり、ミステリについてはほぼ素人である僕であっても、実に興味をそそられる。
この作品の真相と結末を知らぬまま、物語を閉じるのは惜しい。
そう感じたから僕はこうして筆を執った。
これは読まれるべき作品である。
断じて駄作の類ではない。
という訳で、カクヨムコンにミステリを求め欲する読者よ、ここに集いたまえ。求めるものがきっとある。
……と、書いてみたんですけど、これ普通にカテゴリは「現ドラ」なんですね。あいや、勘違い。
許してヒヤシンス。(赤面ダブルピース)