第2話:衝撃のロケテスト

 ロケテスト開始時刻になり、ギャラリーの盛り上がりは最高潮となっている。

 しかし、この状況でパニックにならないのは――この会場が数百人規模のキャパシティを持っている場所なのに、百人に満たない数しか入っていないからだろう。

 ゲリラロケテストと言うのも理由の一つだが、それ以上にスタッフ側も大規模人数をさばききれないという事だろうか?

『それでは、今回のロケテストを始める前に、いくつかの注意事項を――』

 ゲームの方は説明を聞いた所で、内容が把握できる訳もなかった。それ位に高度な解説――なのだろうか?

 話している事は分かりやすく噛み砕いて説明をしているように見える。周囲の反応を見ても分かりづらいと思うのは、開発中の作品だからかもしれない。

 正式稼働時には変更される個所もあり、それに加えて撮影禁止と言うのも――。ロケテストで撮影禁止なのはよくある事だが。

(見た目はアクション系か。それに、様々なキャラクターが登場する作品にも覚えがある)

 雪華せっかツバキはギャラリーの方を気にすることなく、スタッフの方に視線を合わせていた。

 それに加えて、動くゲーム画面を見ていて抑えきれない想いが爆発しそうなのである。

 ゲームがプレイ出来るかは分からないが、あの動く画面を見ただけでこの反応。実際にプレイしたらどうなるのか?



 ツバキはプレイできなかった訳ではないが、ある程度は触れる時間があった。そこでは、アバターの一体である女騎士のジャンヌを選択する。

 他にも使用出来るキャラがいたのは事実であり、他のプレイヤーはスーパーヒーローやロボットを選ぶプレイヤーが多かった。

 その中で、あえてツバキは他のプレイヤーが今まで選んでいないジャンヌを選択する。その眼には、迷いはなかった――。

『君は、私のマスターなのか?』

 ゲームモニターを飛び出し、現実世界の目の前に姿を見せた、いかにも英雄を思わせる女騎士を見て――ツバキは言葉を失う。

 ゲームアバターが現実世界で暴れまわるような作品は過去にも存在していたのだが、それを特撮等ではなくゲームと言う形で再現するメーカーが現れるとは驚くしかない。

 ツバキの目前に現れたジャンヌは、まるで自分に声をかけているかのような状態だったのは間違いないだろう。

(これが、虚構だというのか?)

 ツバキは思うが、それが言葉に出る事はなかった。



 自分があの動画を見て驚き、目の前にあった自動ドアを開いた先にあった世界は――間違いなく、別世界だったのは間違いない。

 ゲームのロケテストとしては大きなトラブルもなく、実際にゲームをプレイする事も出来たのだが、心残りがあるのも事実だ。

 このゲームが実際に稼働できるかどうかは、まだ未知数だというのである。

『今回のゲームは、アバター出力の部分や様々な個所でテスト中の箇所があります。これを実際に展開できるかどうかは――』

 スタッフからは弱気とも受け取られそうな発言もあった。実際、あれだけ大規模な出力装置を日本全国へ設置しようとすれば予算がかかるだろう。

 実際、アバター出力やフィールド展開等の部分は明らかに2.5次元舞台以上に斬新な演出もあったし、ARライブと言う物も現実化している今ならば、アリと言えるかもしれない。

 しかし、本当にこのゲームが日本全国でプレイ出来るのだろうか? 


 

 それ以上にツバキが疑問に思う個所もある。それは、SNS上における炎上行為だろうか。

 これは様々なヒーローやヒロインが出ている作品であると同時に、賛否両論が起こるのは事実だ。

 許諾外作品のキャラクターが無双して大活躍するような二次創作動画が拡散、本作の技術を盗用したゲームが先に発売される――。

 様々な問題が存在するのは事実であり、そうした問題を全て解決できるような有効な手段もあるかどうか不明。

『本作は、あくまでもロケテストのみでサービス開始されずに終わる可能性もあるでしょう』

 それを踏まえた上で、あのスタッフが口にしたのは――遠回しにSNS炎上でサービス出来なくなる可能性を踏まえていたのだろうか?

 まとめサイト等では虚構バトルロイヤルの評価は、文字通りの賛否両論だった。だからこそ、ツバキは何としても変えたかったのだろう。

(このゲームが心ない炎上で終わるような世界出ない事を、自分は望みたい――)

 ツバキの強い思いは、これから始まる大きな物語の始まりでしか過ぎない。

 彼は間違いなく、コンテンツ流通を妨害しようという組織とこれから戦おうとしていたからだ。



 その後、彼の活躍が実際に書かれる事はなかったらしい。何故かと言うと、第一話の途中までの段階で不人気と言う事で作者自身が打ちきったという理由があるようだ。

 原因は不明だが、ランキング上位が二次創作の夢小説ばかりで出すサイトを間違えた可能性もあるのでは――というまとめサイトの記述もある。

 本当にそれだけなのか? 別に理由があるのではないか? 問い詰めようとしても、この段階で打ち切りと言う状態でも完結をしている以上、読者がそれを知る手段はないだろう。

 この物語をたたき台にして、新たに別の作者がコンテンツ流通に関して描き切れるかどうかも分からない。

 まとめサイトに掲載されて炎上した訳ではないのに、この物語が注目された理由を知る者は――いるのだろうか?

 メッセージがSNS上で歪められ、それこそ様々な勢力の炎上ネタとして悪用される事を恐れたのか?

『もう一度問う。お前には、戦う資格があるのか?』

 まとめサイトに添付された動画には、ジャンヌが登場するシーンが添付されていた。

 これが真実なのかどうか、単純に都市伝説なのかは定かではない。第三者が生み出したフェイクニュースなのかも――調べようがないのだから。

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