第3話 エピローグ

予定通り、俺は、午後の授業は轟沈してた。


当然予定通りに、クラスで一番ノートが綺麗な女子の処に行って、午後の授業のノートを見せてほしいと頼んだ。


当然、彼女は快く俺にノートを貸してくれた。俺が、ノートを一生懸命写メしてたら、ノートの隅の方に落書きがしてあるのが目に留まった。


「エッチなピンナップが貼ってある男子の部屋で、勉強したいな……」


え、これって俺の秘密のポスターの話か? まあ、俺もクラスで一番ノートが綺麗な女子のパジャマ姿見ちまったしな。弱みはお互いに共有しようぜ、って作戦か?


今朝の不思議な世界の話も、もう少し彼女としたいしなあ~。彼女のパジャマ姿も可愛かったし。


写メを取り終わった後で、ノートの落書きの下に、俺の字で大きく、

『OK!』

って書いて、彼女に直接手渡した。


彼女は、俺の返事を見て、ニコリとほほ笑んでくれた。これからは、『クラスで一番ノートが綺麗な女子』じゃあなくて、『俺の彼女』って指示代名詞を変えないといけない事になりそうだ。



◇◇◇ ◇◇◇



ここからは、内緒の話です。



◇◇◇ ◇◇◇


「同じクラスの中に、私の片思いの男の子がいるんです。彼とどうやったらお付き合いできるのでしょうか?」


私は、お腹を空かして道端で倒れていた、青い色をしたネコ型ロボットを助けて、どら焼きを与えながら訪ねた。


「もぐもぐ。そうだねー。色々な方法があるけどね。でも、その前に、一度彼に告白してみたら」


「ソンナ事言わないでください。最初から告白出来たら、ロボットさんにお願いしたりしませんよ。ロボットさんは、未来から来たロボットなんだから、色々な機械をお持ちでしょう?」


そう言いながら、追加のどら焼きを彼の前に置く。


「例えば、矢が刺さると私を好きになってくれる、キューピッドマシンとか」


「もぐもぐ。どら焼き美味しいなあ、もう一個もらうね」

そう言いながら、どら焼きをもう一つまみ取って食べる。


「うーん。そういう機械は、結局一時的なものだから、後で後悔するんだよねー」

どら焼きを食べながら、ネコ型ロボットは独り言を言う。


「そうだ。お姉さんは《吊り橋効果》って知ってる?」

さらに一つまみどら焼きを取りながら言う。


「カナダの心理学者の有名な実験なんだけど、吊り橋の上で、若い女性がアンケートと称して男性に声をかけるんだ、その時に女性は連絡先を男性に教えておく。その後に男性から連絡が来る率は、揺れない橋より、揺れる橋の方が高いんだそうだよ。揺れる橋の緊張感と、女性に対する恋愛感情が、ごっちゃになるという説だよね」


お腹のポケットをまさぐりながら話を続ける。


「僕の持っている機械の中に、扉を別の空間に接続するという機械があるんだけど、これだと一回しか移動できないんだ。それの改良版として、別々の場所の扉同士をつなぐことが出来る機械もあるんだ。この機械のオプションとして、この世界とは別の空間に接続する事も出来るんだ。まあ、大きなお化け屋敷みたいなもんだよね」


ネコ型ロボットは、なおもお腹の中をもぞもぞさせながら話を続ける。


「この機械をオプション付きで貸してあげるね。これで、お姉さんの部屋の扉と、片思いの彼の部屋の扉をつないだり、教室の扉を別の空間の扉につないだりして、少し怖い思いを経験させる事が出来るよ」


お腹の中から、不思議な形をした扉を取り出す。


「人間、怖い思いをした時に本性が出るから、その経験をしたうえで、それでもお姉さんが、片思いの彼を好きだと思うなら、告白しちゃいなよ。二人で危険な経験を共有すれば、それは恋に向かって一直線だから」


人一人が通れるくらいの小さな扉だが、縁の部分には不思議な模様が描かれている。


「ただし、《吊り橋効果》は吊り橋の上でしか作用しないからね。だから逆に、吊り橋から降りても、片思いの彼が、お姉さんに興味を示してくれれば、それは吊り橋効果では無いから、安心してね」


扉に付いている取っ手も、金色の不思議な形をしている。


「あー、どら焼き美味しかった。お姉さん、ごちそうさまでした。それじゃあ、この機械を置いていくから、使い終わったら返してね」


そう言いながら、ネコ型ロボットは、扉と扉、扉と異世界をつなぐ機械を貸してくれた。


私はその機械を使って、次の日の朝、片思いの彼の部屋と私の部屋の扉をつないだ。


そして最初に続く……

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扉の向こうは不思議な世界? ぬまちゃん @numachan

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