エピローグ
桃色の吹雪。桜の花びらが舞う。
この春、御堂暁は医用工学を学ぶ大学生になった。
模試での成績は合格ラインぎりぎりであり、浪人も覚悟していたが、なんとか合格することができた。
将来の夢に目を輝かせる暁であったが、今日は急な用事が入っていた。
「おじいちゃん、研究のパトロンが大事だっていうのはわかるけどさ……
なんで関係ない俺が顔出さなきゃいけないわけ……?」
その言葉に白衣の老人、御堂仁は首を振りながら答えた。
「私にもわからないよ。だが気まぐれなお嬢様の指名でね。
時々突拍子もないことを言い出すんだよ。
ああ、今はなくなったけど昔はかんしゃくを起こして色々と大変だったよ……
一命をとりとめて本当によかった……」
「本当に何があったんだ……?」
「まあ取って食われはしないだろうよ。
……本当、あのときはお金も技術もつぎ込めるだけつぎ込んで、
綱渡りに次ぐ綱渡りでやっとだったなあ……」
嫌な思い出なのか、ぼやく祖父を見て本当に会いに行っていいか悩む暁だった。
彼は知らない。パトロンとのあいさつの席で、祖父の開発した人工心臓ユニットつき車椅子に乗った、妙になれなれしいお嬢様に出会うことを。
そしてそのお嬢様に取って食われそうになることを。
さらには、そのお嬢様を狙う魔の手と、それを防ごうとする魔術師との出会いを。
人の力、金と技術は確かにあった。
この世界がこれからどうなるか。それはもはや誰も知らない。
黒き鋼鉄の夜明け 444 @f_0452
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