SNSと検索エンジン

幸野曇

友達とは 検索

いつまで、この人の事が大好きだっただろうか。

いや、ついさっきまで大好きだったはずだ。


「真尋歌わないのー?」

「うん、今日は聞いてるだけでいや」


中学からの友達とカラオケボックスに来ている。

友達____いや、ただのクラスメイトと言っても良い位関係は浅いけれど。


先月買ってもらったタブレットで見ているのは、小学2年生まで住んでいた所の親友のアカウント。

本名だったので、容易に検索で探しだす事ができた。

単なる好奇心だった。どうせなら繋がりたいな、と思っただけで。

だが、そこにった文章で、全身が凍りついた。

真尋まひろ死値。真面電死値』

漢字だらけの文字列。けれどそれは決して中国語ではない。

真尋しね。まじでしね。きっと、それを伏せただけだ。

フォロワー欄を確認する。真尋、というユーザーネームの人はいなさそうだ。自分宛だと確信した。

何か悪い事をしたのだろうか。必死に昔の記憶を漁る。


____あった。

かすかにだが、遊んでいる時たまに嫌そうな顔をしていた。

その瞬間は全く気付かなかったが、もしかしてその時から嫌いだったのだろうか?


私は段々、友達ってなんなのだろうと思ってきた。

新しいタブを開き、キーボードを出す。

もう慣れたローマ字変換で、『友達とは』と検索する。

一番上には、某説明が若干難しい情報宝庫の文章が出てきた。


友達とは、互いを肯定し合っている人間関係や感情。簡潔に言うとそんな意味だ。

肯定の意味がいまいち分からないので、ブラウザバックしてまた検索する。

『肯定とは』。否定の対義語なので、認めるみたいな意味だろうか。


____その通りであると認める事。予想は当たっていた。

そこで私は考える。

自分はあの子が大好きで、あの子が言っている事の大半は認めて__肯定して__いた。

けど、あの子は? 私を肯定していたのだろうか。


考えれば考える程分からなくなってくる。

そんな頭の容量があまりない私は、タブレットの電源を落としてマラカスを鳴らしだした。

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