第八話

恋をするということ


刹那の如く過ぎ去るこの逢瀬の時を、私は一日千秋の想いで乾燥した日々を過ごしてきた。

対面に座るあなたを目の前にしながら、私はゆっくりとブラックコーヒーを啜る。

平板な日々はこの底の見えないブラックコーヒーよりも暗い、闇に包まれる。

しかし私はあなたという存在をたいまつにして、その闇を照らすことができる唯一無二の存在。

そのたいまつは小さな灯に過ぎないが、確実に、そして正確に私の心を温める。

息を一息吹きかければ消える事を知っている。

その灯は二度と私を照らしたりはしない。神経を切り裂く、深い闇が再び訪れる事だろう。

コーヒーの不味さに思わず顔をしかめる。

そして教えてくれる。これは紛れもない現実だと。

恋愛とはつまりはこういう事だ。

会えないときにこそ、ふたりの距離を縮めるのだ。

邂逅。心はあなたのもとに。

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失恋ドーナッツ @kei_tsukishima

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