第2話

国王になって初めての仕事は、各省庁の大臣を決めることだった。

当然だ。それがなければまず政府として動くことができない。

俺のできることにも限界がある。下の人間に指示を下せる人間は必要だった。

だが、これが難航した。

めぼしい人材は既に死亡しているか逃亡しているか……。

官僚から登用しようにも、信用が置けるかが問題だった。


俺をスカウトしてきた遠藤という男は、「自分は秘書でしかない」と言って、大臣にはなってくれなかった。

しかも、大臣候補をリストアップしてくれもしないのだ。

更には……。


「国王のお給料は時給980円です」

「……は?」

「それまでを考えれば好待遇と言えるでしょう。我が国は激貧なんです」


激貧と言われてはそれ以上を望むこともできない。

しかし、せっかく国王になったのだ。もう少し希望は持てないのだろうか。


執務室でうだうだ悩んでいても仕方がない。

風に当たれば何か良いアイデアでも出るかと思い、外に出た。

王城には庭があり、春には花壇に色とりどりの花が咲くらしい。

だが、今はまだ1月。冬真っ盛りだ。

深くは積もっていないものの、庭にはところどころに一昨日降った雪が残っている。


寒い。ちょっと引っかけてきた上着だけではすこぶる寒かった。

何をしに来たというわけでもないのだ。

やはり部屋に戻ろうとしたときだった。


「国王陛下!」


背中に声をかけられ、振り向くと、そこには思いもよらぬ人がいた。

ペパーミント・フリーズ・アンチェルト。

俺の勤めていたコンビニチェーンのトップ、現代表取締役社長だ。

そうか……。国王にもなると、今まで出会うわけもないような上層の人間と出会うのだ。

鉛のように重い責任感に少し吐き気のようなものを覚えながらも、俺はアンチェルトの話を聴くことにした。

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国家元首の時給が980円なんだが~ブラック国家のフリーター国王~ 桜水城 @sakuramizuki

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