第14話 曲がった覚悟

あ、危ねぇ…


流石に動揺した


しかし、不幸中の幸い


飛んでくる瓦礫が止まって見えた


難なく、とはいかないものの、避けることは出来た


着ている制服はところどころ傷ついたが

気にする程では無い


むしろ生きている事を感謝しよう



遠くからガタイのいい男が慌てた様子で走ってくる


「すいませぇん!

大丈夫ですかぁ!?」


志村…か…

丁度よかった、探す手間が省け



?なんだ?

なぜ謝っている?



「あ、あれ?

カケル君じゃぁないか!

良かった探したんだよ?」


「おい、志村」


カケルの予想通りならば、


「ん? どうしたんだい?」


「お前、民家になんかしたか?」


「え? えぇと…

実は能力の練習してたんだよね

ちょっと力んじゃって

めちゃくちゃにしちゃったんだけどね

へへ」


可愛くない笑顔

チカと志村では大違いだ


「あ!もしかして怪我させちゃった!?」


いや、怪我はして無い

まぁそういう問題では無いが…


「怪我は無ぇが 運良く避けられただけだよ

次は無理だ 気ぃつけろよ」


志村に対する口調が荒々しくなってしまった

自制しなくては



…どうやら志村に俺の気持ちが伝わったようだ


「ご、ごめんごめん うん 気をつけるよ」


………


しかし、困った


志村が水を使える事はこれで証明されたが


志村が調整に失敗すれば

俺は店主のように木っ端微塵になるだろう


これでは志村の居る意味が無くなってしまう…


まぁ、志村自身がその能力で目立つ事は容易であろうが それでは逆に俺がいる意味が無くなる


目立つ志村の横に居るだけでは

俺が目立ったことにはならないはずだ



…第一目立つ方法など知らない

バカッターのような事をすればいいのか?


例えば線路に入ってみたり、とか


…しかしこの綺麗なゴーストタウンに 電車など走っている筈も無い



……………


…カケルはある事を思い出す



どうやら参加者(みんな)の中でこれの価値観は同じらしい


ならばこれを利用しない手は無い


そうすれば俺と志村、互いに大量のポイントが入る


それに、チカの援護も可能だ…


そうと決まれば、まずは用意だ

志村の能力、《この水》があれば十分か…



「…志村さん 僕に考えがあります

貴方を英雄にする方法です」


「え、英雄?」



……………


そこに事情の知らない2人の女性が歩いてくる


「あ!カケルぅ!」


あ… アイミ


全速力で走ってくる


思わず身構えた


予想通りと言うべきか、思い切り振り上げられた手が

なんの迷いもなくカケルの背中をバシバシと叩く


い…!


?あれ?


痛くない?


なんで?




…というか、また殴られた


しかし、あの時とは違う


上機嫌だ


「カケルってアンタだよね!

さっきはレナが世話になったよ!

ありがと! 私からもお礼を言わせてくれよ~!

ハッハッハッ!」


絶え間なく叩いてくる

まぁ、あの頃よりは痛くないから別にいいか…

しかし、不思議だ…


自分の成長を感じつつ、いつも通りレナを見る


ん?


特に気にとめていなかったが、レナの足裏は

小石や瓦礫を踏みつけ走った時に負った怪我で

血まみれになっている


「おいっ レナ…

足どうした?」


「え?あ、あぁ…

ちょっと怪我しちゃって あはは…」


俺がレナに無茶な作戦をさせたせいで…


靴を脱ぎレナの前に突き出す


「レナ これ履けよ

ちょっとはマシになると思う…」


「えっ… ありがと…

で、でも…それじゃ カケルが…」


「俺はいいんだよ ほらとっとと履けって…」


「うん ありがと!」


彼女の笑顔がきらめく…


チカに目移りしていた自分を責める


照れからか、ゆっくりと目線を逸らしてしまう



「あ!」


志村を見て大事なことを思い出す


つい大声を出してしまい


勝気なアイミも思わず驚く


「ど、どうした 少年?」


「あ、いや 実は僕、考えがあるんですよ

アイミさん達も協力してくれませんか?」


「?」


レナとアイミは首を傾(かし)げる


“考え”と言っても簡単なものだ


理解出来なくは無いだろう



あらかた話した

レナはかなり不安そうにしている


「あ、あのさぁ

それってホントに大丈夫なの?

保証無いし、失敗すればどうなるか…」


アイミもどうやら反対のようだ…


しかし、時間の無い今は

簡易的かつ確実に皆の注目を集められる方法など

これしか無い


その気持ちを真剣に伝えるが

なかなかレナが許可を出さない


それが何故か俺は分からない


俺をなぜ信じてくれない?


…あの時俺が信じなかったから?


だが、そんな甘い事を言ってる場合では無い


「レナ…

確かにこの作戦はハイリスクだ…

だけど、例えこの作戦が失敗しても

お前らは目立てるんだぞ?

なのに、なんで協力しないんだ?

そんな馬鹿な話無いだろ」


少し圧をかけながら話す


「そ、そういう事じゃ無くて…



もういい…


分かった協力する…」


レナは不服そうに許可をくれた


何故かアイミと志村の表情も曇っている

コイツらも同じ考えなのか?


命をかけたゲーム中にそんな感情になるなど

考えられない…


そう、考えられない…


レナは俯きながら走っていく


アイミはその後を追い、


志村と俺はデパートの前に残る


……………


日が徐々に翳(かげ)り出す

辺りは薄暗くなりデパートの光がより際立って見えた


準備万端


さぁ皆を集めろ


そうだ、出来るだけ多く


もっと


もっとだ


眼下から歓声にも似た叫喚が聞こえる




志村、アイミ、そしてレナ


感謝する


……………



さぁ始めよう

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

HELLOworker @coffeeboy

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ