第125話 乙女ゲームのシナリオ2
「『アイささ』はねちょっと他とは違うんだ。他の乙ゲーだと、選択肢があってその通りに耳障りのいいことを言ったり、一緒にいるだけで好感度が上がっていくんだけど、レベル上げと対決が必要になるの」
「レベル上げと対決」
「そう。6項目あってその能力を上げて悪役令嬢と対決するのよ。まず学力・戦闘能力・魔法能力・芸術・令嬢力・信仰心よ。一番強敵はアリアね。6項目全部できる」
「確かにラリック公爵令嬢はなんでもよくできるお方と聞くわ」
「2番目がディアーナ。信仰心が弱いかな。3番目がマーガレット。この人は魔法が弱いはず。4番目は悪役じゃないんだけどサミーが代わりをするわ。彼は芸術がダメ。令嬢力対決はディアーナがする。
そして全部出来が悪いんだけどあくどい手を使って、こっちのミスを誘発するローザリア」
「うん」
「令嬢と対決して、ポイントを溜めないとレベルが上がらないの。レベルが上がればアリアとでも勝てるようになる。だがらローザリアと対決するんだけど、邪魔ばっかしてイライラすんのよね」
「うん」
「レベルが上がらないとイベントが起きても攻略対象にスルーされるのよね。ちゃんと見てもらうためにはきっちり上げないとね」
「ふぅん」
「何よ!エリー。聞いておきながらその気のない返事は」
「だって、あまりにも自分に関係ないような気がして」
「じゃあもう話さない」
「ごめんごめん。もっと気を入れて聞きます。イベントって特別な戦いって意味だと思ってたけど話の内容からすると違うみたい」
「乙ゲーの場合は違うわね。攻略対象と仲良くなって仲が深まるきっかけね」
「例えばどんな感じなの?」
「そうねぇ、転校初日の日に攻略対象とぶつかるわ。その相手は選べるの。でも普通はエドワードを選ぶかな。逆ハールートにも入れるコースだから」
「逆ハールートってさっきも聞いたけど、全員と恋人同士になるって話なんでしょ。そういうのって認められないと思うんだけど」
「うん。でもそこがファンタジーというか。男たちは王妃になるヒロインを心から愛していて諦めなきゃいけないけど、諦めきれない。だから彼女を共有することを選ぶの」
「ないわー。普通の妻でもありえないのに王妃なんてもっとありえない」
「だからファンタジーなの。夢よ夢!
王妃になって夫からも恋人たちからも国民からも愛される妃になるの」
「ないわー。王妃って確か公爵、侯爵以上の家柄からしか出せないはず。
それにすごく重責よ。夫以外にもいっぱい恋人がいる王妃なんて醜聞以外の何者でもないもの。」
「確かリカルドの家の養女になったと思う。結婚するまでは結構キスしてたけどね」
「うわぁ、あのクライン様が……。
ありえないけど真面目な人ほどタガが外れるとなんとかって奴かな。
あっ、でも確か側妃から王妃になったって話もあるしね」
「それよそれ。でも初めから王妃だったけどね」
ありえない。
一体、何回ありえないを言ってるんだろ。
でも話を聞いていると、王妃はともかく愛妾にならなれそう。贅沢ばかりして国民の
前の王様の時は3人で、今の王様は1人いる。
そういう人がいるとちゃんと働いている王妃に同情が集まって、不満は愛妾に向けられる。
たしか第二王女のマグノリア様のお母様が愛妾でいらっしゃるはず。
憎まれ役の愛妾なんて辛いお役目だと思う。
贅沢できようがいっぱい男性を侍らせようが絶対になりたくない。
「じゃあ、その人たちで乙女ゲームが進行していくのね」
「ううん、2人ほど重要なサポートキャラがいるわ。1人は情報屋のマルト。
この子は勉強も出来るし裕福な商人の娘でバートの幼馴染なの。
普通だったら悪役令嬢なんだろうけど、美人じゃないんだよね。
ヒロインの敵にもならないから、いろいろ情報くれるの」
「同じクラスにマルト・ドロスゼンって子がいるけど」
「それよそれ!お母さんがドロシーって言うの。
凄腕の女商人なんだけど、私生児産んじゃって地位が低いのよね。
でもバートのお父さんは実力主義だから一緒に仕事するの」
ドロスゼンはクラス委員もやっている真面目な子だ。
たぶん入学テストは3位だったんだろう。すごく頑張っている。
それに美人じゃないってそんなことないよ。
眼鏡をかけていて地味にしてるけど、結構きれいな顔している。
「もう1人がアイテム屋のトールセン。男の子だからかファーストネームはなかったわ。いつも生成りのフード付きローブを着ててはっきり顔が見えないの」
「「ええ~~~~~~~~?」」
ドラゴ君と私の叫び声がハモってしまった。
「何よ、2人して」
「だって、トールセンって私のことだもの」
「エリーがトールセンなの?あの凄腕錬金術師の?」
「まだ付与と魔法陣ぐらいしかできないけどね」
「男装してるから、エリーでも男の子に見えるかもね」
「何で男装なのよ。いつもなの?」
「うん。いつもだよ。女子だと社交でドレスが必要なの。そんなの買ってたら破産するもん」
「そんな理由で?エリー、ケチなのね。でも確かゲームのトールセンも支払えなかったらアイテム絶対つくってくれないしね。」
「使うところには使うよ。ぼくらのおやつはけちったことないよ」
「当たり前でしょ。私のかわいい従魔なんだから」
「そうかー、だからトールセン顔を出してなかったんだな」
モカは絶対隠しキャラだと思っていたのにとか、あのトールセン説間違ってたじゃんとか、何やらブツブツ言っていた。
でもそれだと私が攻略対象たちと恋仲にならなくていいんだ。よかったぁ~。
「でもどうしよう。私お金ないからクランの仕事いっぱいしないといけないの。
そんなアイテム屋なんて」
「ああそうそう、確かゲームのトールセンもお金がないのよ。だからアイテムを高額で売ってるの。それを買うお金をミニゲームで稼がないといけないのよね」
「ミニゲーム?」
「基本的にはダンジョンでの宝探し、あとアルバイトね」
ほっ。普通に働くってことね。
「確かマルトがアルバイト情報を、トールセンがダンジョン情報を渡してたよ」
ダンジョンのことなんか全然知らない。
攻略なんか授業でもない限り行く気ないし。
「そのヒロインは何科なの?」
「魔法戦闘科だったと思う。とんでもない魔力の持ち主だから」
ならダンジョン向いてるね。
「攻略対象と仲良くなるとパーティーが組めるの。そのためにも対決してレベル上げしないといけないし、勝つためには情報やアイテムを手に入れなくてはいけない。
そして情報やアイテムを手に入れるにはお金がいるのよ」
なんか世知辛い遊びだなー。まず金策から始めないといけないなんて。
でもそのためのダンジョン攻略なのにパーティー組めないなんて。ヒロイン大変。
でもアイテム屋かぁ。
うーん、まだ一人の人を愛するならわかる。でもそんな逆ハーとかする子だったら絶対に手伝うのは嫌だ。
それにアイテムを作って自分で売るよりも、多分クランで働いた方がいいはずだ。
学生相手ではなく『常闇の炎』の名前で貴族に売った方が絶対に値段が上がる。
もしそれが新商品なら特許を取ったり、クランで専売してもらえば、その分のお金を上乗せしてくれるんだし。
うん、ないな。
「それってやらないとダメなの?」
「やらないといけない訳じゃないけど、助けてあげないの?」
「そりゃ、とても仲良くなって助けてあげたいと思うような子ならいいけど、私基本的に忙しいの」
いったいいくら治療費かかってるかわからないからもの。億は下らないって母さんが言ってた。
そんな状態で誰かを助けるなんて出来るとは思えない。
それとも金策だからやるのかしら?
------------------------------------------------------------------------------------------------
10万PV感謝記念SSを前後編アップしました。ありがとうございました。
ご興味のある方はどうぞご覧ください。
「Holy night」
前編)
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893085759/episodes/1177354054893085991
後編)
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893085759/episodes/1177354054893086337
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。