一夜のキリトリセン
蟬時雨あさぎ
ある姉弟、あるいは兄弟の話
「姉さん。――
神々が住まう、
「あら、貴方から話しかけるなんて珍しいわね。……どうしたの、
振り返った女性は、艶のある黒の長髪に太陽を思わせる髪飾りを付けている。
「……
そう聞いた青年の名は
そして今、彼女は首を捻っている。
「そう、ねぇ……」
また、
「それは
それを思い出した
「月が出ている間ではなくて?」
その笑みは美しく、
その様相に、
「そうか、分かった。……姉さんの言う通り、月の出ている間を見守るとしよう」
○●○●○●○●○●○●○●○
「……んで、兄貴はそれを律儀に守ってると?」
「勿論だとも」
「はー……。姉貴も姉貴だけど、兄貴も兄貴だよなぁ」
とある真昼間。そう溜息を吐いたのは
因みに、現在進行形で
「? どういうことだ?」
「や、まあ追い追い話すわ」
首を傾げる
「んで兄貴、それは何百年ぐらい?」
「ん……五百年とか、六百年とか?」
この辺りは
「それまでは?」
「何となく、暗いときを統べてた」
「そっちが正解だよおおお……」
片手で頭を抑える弟を、兄は尚も不思議そうに見つめる。姉貴と兄貴はちょっと抜けているところがあるな、と思ってはいたものの、ここまでだとは信じたくない
「
おずおずと落ち着いた口調ながらも、芯のある声音で
「ああ、そーかよ。じゃあはっきり言うぞ!?」
「嗚呼、はっきり言ってくれ!」
その
「いいか、兄貴も――姉貴もよく聞け!」
太陽を指差して、末の弟は心の限りに精一杯叫んだ。
「時と場合によってはな、太陽と月は同じ時間帯に空にあるんだよおおお!!!!」
一夜のキリトリセン 蟬時雨あさぎ @shigure_asagi
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