本作は日中戦争の前夜――作中では義和団の乱から三十年という記述があるので、そろそろ満州事変も起ころうかという時代背景のなか、義憤に駆られた若者たちによる闘争が描かれている。
抗日運動と言われると、われわれ日本人はちょっとドキッとしてしまうが、立場が逆であれば同じことをしたのではないだろうか。
われわれ日本人に武士道があるように、彼ら中国人のなかにも脈々と受け継がれてきた「武侠」の精神があるからだ。
この時代。日本人は中国にとって明確な「敵」だった。
主人公フェイロンもまた、幼い頃に父親を不条理なカタチで日本兵に殺されている。
やり場のない怒りは、武術を極めんとするちからとなった。
そして時が経ち、彼は仲間たちと共に日本軍への復讐をはじめる――。
主人公フェイロンのモデルは、言わずと知れた洪家拳の使い手・ファン・フェイホン。
また実在の拳法の名前がずらっと並び、「その筋」のファンにはたまらない。
年代は違うが、映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」や「イップ・マンシリーズ」「グランドマスター」などを観たひとには、おもわずニヤリとするシーンもあるのでは。
また本作はただ日本兵を主人公の「敵」として描くだけではなく、民族や立場を越えた「武」を志すものとしての共感をも描いている。
まだまだこれから続くてあろう本作への興味は尽きない。