新たな友達
放課後。
学校から少し離れたところで俺達は合流した。
「今日はよろしくね」
俺と姫野さんの元に椎名さんが自転車を漕いできた。
「こちらこそよろしくお願いします」
椎名さんと姫野さんが少し緊張してる感じで挨拶を交わした。
「みんな堅いなー。同じクラスなんだからリラックスしていこうぜ」
「そうですね」
姫野さんはそう言ってにこっと笑った。
相変わらず前髪で目が隠れて表情が全部読み取れるわけではないけれど。
「じゃあ、行きましょうか」
姫野さんその言葉で俺達は例のカラオケ屋に向かって自転車を漕ぎ始めた。
それから10分も経たないくらいでカラオケ屋についた。
何度か見た店員さんを見ながら受付を済ませ部屋へと到着する。
「それじゃあ、今日は第一回アニメ好きの会ということで! かんぱい!」
姫野さんがドリンクバーでいれてきた飲み物を手に取りそう言った。
「「かんぱい!」」
姫野さんがそんなことを率先していうのは意外だと思ったけど、姫野さんは本来こういうキャラだという事を忘れていた。
学校だとまだみんなの目があるから本性をだしてないだけだろうけど。
「じゃあ、姫野さん早速一曲どうぞ!」
そう言って俺は姫野さんにデンモクを渡した。
「私も姫野さんの歌聞きたい!」
姫野さんは少し顔を赤くしながらもデンモクを受け取り曲を入れた。
入れた曲は5年前に社会現象まで起こした名作のエンディング曲だった。
「あ、この歌好きー!」
そのタイトルを見て椎名さんは目を輝かせていた。
もちろん俺も知ってるしすきだ。
姫野さんは髪を後ろで束ね美少女を降臨させた。
この美少女に椎名さんはどんな反応をするのか。
「やっぱり姫野さん可愛いわね」
特に驚いた表情も見せず淡々とそう言った。
しかし、姫野さんはぼわっと顔を赤くしていた。
「い、いきなり何をいうんですか!」
「だって、教室だとずっと髪で隠してるしなんでそんな可愛いのに隠してるんだろうって同じクラスになった日から思ってたわ」
どうやら椎名さんは姫野さんが超絶美少女だという事を知っていたらしい。
「そ、そんなに可愛い可愛い言わないでください……」
恥ずかしさを紛らわすように姫野さんは歌を歌い始めた。
普段とは違う声量に俺と椎名さんは目をかっぴらき驚いた。
確かに一度聞いたとはいえ、やはり鳥肌がたつ。
それくらいにはすごいのだ。
歌い終えると俺と椎名さんを交互に見た姫野さんは少し頬を赤くしてちょこんと座った。
その姿がまた……萌える。
「扉越しに聞いたことはあるけど実際に聞くとこれほどまでとは……」
椎名さんは感無量という感じだった。
「さぁ次は秋月さんですよ!」
そう言って姫野さんは俺にデンモクを押し付けてきた。
これもまた恥ずかしさを紛らわすためだろう。
本来は前の人が歌ってる時に入れてるんだけどあまりにも上手すぎて忘れていた。
俺は毎度恒例の【異世界時計物語】のオープニング曲を入れた。
歌い終えた後は少し恥ずかしかった。
姫野さんが頬を赤くする理由が分かった気がする。
「秋月くんも歌上手なのね。姫野さんほどではないけれど」
「なんとも反応しにくいな。とりあえずありがとう」
その後は椎名さんが歌った。
特に上手でもなく下手でもなく……
普通だった。
気になったの椎名さんの入れた曲がロボットアニメのオープニングだったのだ。
しかも男子がすごくテンションが高まったり熱くなれるような曲だ。
朝日がこんな曲をよく好んで歌う。
「この曲ロボットアニメの曲だよね」
「流石秋月くんね」
「まぁ友達が歌ってたから知ってただけなんだけど」
もちろん朝日である。
「私こういう曲も好きなのよ」
正直意外である。
偏見だがこういった曲は男子のほうが好きな人多いと思ってた。
その後は、それぞれ歌い終わった後にそのアニメについて語るというパターンで3時間ほど歌った。
時間が来たところで俺達は会計を済ませてカラオケを出る。
「今日は本当に楽しかったです! また来たいですね」
「そうね! 私も色々なアニメの話が出来た楽しかったわ」
「俺もだ」
2人とも笑顔で改めて今日はこの会を開いて正解だったと思った。
「じゃあ、また明日学校で」
「はーい!」
「おう!」
こうして俺達はカラオケを終えて各々帰宅した。
「ただいまー」
「おかえりー」
またも結はひょこっとリビングから顔を出した。
「お風呂もういけるよー」
「お、サンキュー!」
何故か今日の結は機嫌がいい気がする。
口調からそんな気がする。
お風呂を済ませすぐにご飯を食べて部屋に戻ると、姫野さんからメッセージが届いていた。
『今日は楽しかった! またいこー!』
そのメッセージに俺は少しにやっとした。
分かるだろうか。
敬語じゃなくなってる。
いや、ヒトカラがばれた時はおそらくまだ心を開いてなく距離をとっていたらから圧をかけてきたと思うが、今回は分かる。
確実に距離が縮まっている。
いい意味で敬語が消えた。
俺は心の中でガッツポーズをした。
『うん! またいこ!』
と、姫野さんに送ったところで次は椎名さんからメッセージが来た。
『今日は誘ってくれてありがと。また誘ってくれると嬉しい』
2人とも本当に律儀である。
『また誘うよ! 楽しかったよ!』
と、送っといた。
それからは2人と1時間ほど今日カラオケで歌ったアニメについて話していたのだが、2人とするのが面倒くさくなったのでグループを作った。
『ここで話そうぜ』
グループを作って俺はそうメッセージを送った。
『はーい』
『りょーかい』
2人からそんなメッセージが飛んできて。
それからはまた1時間ほどアニメの話をしてみんな落ちていった。
「さて……と」
昨日は更新したとは言え最近サボり気味だったので、俺はパソコンを立ち上げブログを更新した。
30分ほどで簡単な記事を作り更新した。
正直クオリティとしては微妙だが、しないよりはいいだろう。
やることは終え、ベッドに横になり目を閉じるとすぐに眠りについた。
***
次の日の昼休み。
俺は相も変わらず朝日、高杉の3人でご飯を食べていた。
「なぁ、やっぱり秋月と姫野さん出来てるだろ」
またも朝日はそう言った。
「だから、そんなんじゃないって」
「もうクラスでは話題だぞ。姫野さんの愛妻弁当を秋月が食べてたって」
確かに昨日、姫野さんに弁当貰って食べたけど。
「俺達は食堂に来てたから分からなかったけど、本当に姫野さんから弁当もらったのか」
「う、うん」
俺がそういうと朝日ははぁーっとため息をついた。
「な、なんだよ」
「秋月、それは言い逃れ出来ないだろう」
朝日がそういうと高杉もうんうんと頷いた。
確かに、女の子から弁当作ってきてもらったりとか恋人っぽいなとかは思ったけどまさか一回でそんなに思われるとは思ってなかった。
「じゃあさ、もし俺がクラスの女子から弁当貰って一緒に楽しそうにご飯食べてたらどう思うよ」
「そりゃ……」
カップルかと……思うよな。
「そういうことだよ。もうクラスではそう思われてるだろうよ」
「まじか」
俺は正直嬉しいが姫野さんにとっては迷惑だろう。
かといって誤解解く方法も分からないしな。
「まぁ、俺は2人ともお似合いだと思うから応援はするよ」
「だからそんなんじゃねーよ」
と、言いながらも姫野さんはどう思ってるのだろうかと思っていた。
***
珍しく放課後は特に予定もなく、朝日と高杉もバイトという事で真っすぐ家へと帰った。
「ただいまー」
とドアを開けようとしても開かなかった。
どうやら結もまだ帰ってきてないらしい。
ポストに入ってある鍵をとり玄関の扉を開けカバンなどを自分の部屋に置く。
「いつも結にやらせてばっかりだしな」
何かしようにも料理が出来るわけでもないのでお風呂の用意だけでもすることにした。
お風呂掃除を終え、お湯を入れるように設定して自室へと戻る。
ベッドに横になると異常なまでの睡魔が襲ってきた。
特に抗う必要もないと感じ、俺はそのまま眠りについた。
***
「ちゃん……おにーちゃん」
不確かな意識の中で、確かに結の声が聞こえる。
「ゆ……い……?」
「ご飯できたよ」
その声で俺ははっと目を覚ます。
そこには結が横になった俺を覗き込んでいた。
「あ、起きた! ご飯できたから降りてきてね」
そういって結は鼻歌を口ずさみながら出ていった。
時計を見ると18時。
家に帰ってきたのが15時30分だから、約2時間半も寝ていたことになる。
(久しぶりに昼寝した)
目をこすり、あくびをしながら下へ向かう。
リビングが近づくと美味しそうな匂いがしてきた。
「今日はかつ丼か」
「そうだよ!」
結がかつ丼を作るなんて珍しい。
近々何かイベントでもあるのだろうか。
そんなことを思いながら俺は結の向かいへと座った。
「いただきまーす」
今日の結はいつもよりニコニコ笑顔倍増だ。
「おにーちゃん! 明日は10時に出るからね」
「あぁ、わかった」
そういえば明日は結と出かける予定だったな。
「あしたはおにーちゃんとおでかけー」
結の最近の上機嫌はそれだったのか……
そんなに俺と出かけるのが楽しみのなのだろうか。
俺なんかただ付いていくだけなのに。
何はともあれそれだけ楽しみにしてるってことは何かしたら楽しませないとな。
目の前の結を見ながら俺はそう思った。
同じクラスの陰キャラ女の子が超美少女だった~ありのままの自分をうまくさらけ出さない学生たちのちょっぴり甘い物語~ かのか @kanoka511
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