類は友を呼ぶ

 家に帰ったのは昨日よりも30分ほど早いくらいの時間だった。

 といっても、普通に帰ってくるよりかは遅い。


「ただいまー」


「おかえりーお兄ちゃん」


 またリビングからひょこっと結が出てきた。

 

「お風呂もう入ってるよー」


「あぁ、ありがとう」


 お風呂が入ってるとの事なので、すぐさまお風呂を済ませ自室に戻りアニメを見る。

 今日は、朝日におすすめされたガ〇ダムシリーズだ。


 俺は全く見たことがないのだが、朝日は本当に面白からと熱弁してくる。

 朝日曰くガ〇ダムファンでも色々派閥があるらしいが、俺はいってしまえば初心者なのでその域には達していない。


 初代の2話あたりを見てるところで結からご飯のアナウンスが入った。

 俺はすぐさま停止して下へと向かう。


「今日は肉じゃがかー。結の作る肉じゃがは美味いからな」


 俺はご飯をよそって結の向かいへと座りご飯を食べる。


「お兄ちゃん最近帰るの遅いよね」


 ぼそっと結がそう言った。


「ご、ごめんな。ちょっと色々あってな」


「最近夜ご飯の時しか話さないし、今週の休み私の買い物にでも付き合ってよ」


 つまり、もっと私に構ってくれとそういう事だな。

 結は昔からそうだ。

 少し構わないと、すぐに構ってほしがる。

 俺もそれが悪いとは思ってないので、構ってほしいというならそうする。

 今回だってそうだ。


「わかった。今週の……土曜日でいいか?」


「うん!」


 俺がそういうと結はぱぁっと表情を輝かせた。

 それからご飯を食べ終えた俺は自室へと戻った。


「さて……と」


 俺はパソコンを起動させ、ある作業へと入る。

 

「今日は【異世界時計物語】の記事でもかくとするか」


 俺は中学生の時からブログを書いている。

 ほとんどが俺のみたアニメについてなのだが、何が気に入られた結構見られている。

 収益化もしてそんなに多くはないとはいえ、高校生のアルバイトくらいには稼げている。


 特に今期のアニメである異世界時計物語については特に閲覧数が多くなる。

 それだけ注目度も高いという事だろう。


 

 それからブログの記事を見てると、スマホから通知音がなった。

 

『こんばんは』


 相手は姫野さんだった。

 その名前を見てから俺の心臓はドクンとなった。


(もしかして……カラオケの誘いか?)


 少し嬉しくも思いながらもし明日カラオケに行くとなれば4日連続のカラオケである。

 それは流石にしんどい。というか喉も痛い。


『こんばんは』


 と返信を送るとすぐに返事が来た。


『今日もカラオケ行ってたんですね』


 その内容を見た途端、異常なまでな汗が出てきた。

 何故かは分からない。だけど文から何か最近結から感じるのと同じような圧を感じる。


『うん。行ってたよ』


 とりあえず様子見る為に、無難な返事を送っておく。


『秋月さんモテるんですね』


 やはり椎名さんと一緒に行ってることはばれていた。

 いや、ばれたから何かまずい事があるわけではないけれど。


『そんなのじゃないよ。ちょっと相談を受けただけ』


『相談……ですか?』


 椎名さんがアニメ好きか言おうか迷ったけど、椎名さんはアニメ好きな人と友達になりたい訳だしむしろ姫野さんに言った方がいいかもしれない。


『椎名さん実はアニメ好きらしくてさ。それでアニメ好きな友達がほしいらしいんだ』


『そうなんですね。意外ですね』


 どうやら姫野さんも意外に思ったらしい。


『詳しい事は明日話すよ』


『わかりました。それではお昼一緒に食べますか?』


『分かった。そうしよう』


 朝日と高杉には悪いけど、明日は一緒にお昼に行けないことを言っておこう。



***


 次の日のお昼休み。

 お昼休みになると姫野さんはすぐに俺のところにきた。


「食堂でいいかな?」


 俺がそういうと姫野さんはカバンの中をごそごそし始めた。


「お弁当つくってきたので良かったら一緒に食べましょう」


 姫野さんは少し顔を赤くして黄色の包みに入った弁当箱を一つ俺の目の前に置いた。


「え? いいの?」


 と、俺は言ったが心の中は人生最大のガッツポーズをかましていた。

 だって、美少女のお手製弁当だぜ。

 これでテンション上がらない男子はいないだろうよ。


「はい。大丈夫ですよ」


「じゃ、じゃあお言葉に甘えて」


 中身を空けると、唐揚げやハンバーグなど肉料理や野菜もちゃんと入っていてとても美味しそうなでバランスもよさそうな弁当だった。


「おいしそー!」


「自信はないですが」


「じゃあ、いただきまーす!」


 まずは唐揚げを一口食べる。

 すると肉汁がぶわーっと口の中に広がり、しつこくなくかつ濃い味が広がった。


「う、うまい!」


「それはよかったです」


 姫野さんも自分の弁当を開け食べ始めた。

 

「あ、そうだ。椎名さんの事だったね」


 そう言って俺は椎名さんの事を1から詳しく説明した。


「なるほど……秋月さん。明日の放課後空いてますか?」


「明日?」


「はい。よければ椎名さんも含めて3人でどこかでお話したいなと思いまして」


「なるほどね。でも今日じゃなくていいの?」


「秋月さんも今日くらいは家でゆっくりアニメを見たいと思って明日にしたのですが、秋月さんが今日でもいいというなら椎名さんに聞いてみてもいいかもしれませんね」


 この子は本当に天使だろうか。

 人の気持ちを考慮したうえで明日と提示してくれたのか。

 それも的確に理解している。

 でも俺は目の前の天使の為なら多少溜めたアニメを見なくても我慢できるという自信がある。というよりその自信が今湧いてきた。


「俺は今日でも大丈夫だよ」


「そうですか。では椎名さんに聞いてみますか」


 そういうと姫野さんは席を立ち、太陽のような眩しいグループの人たちを一緒にご飯を食べている椎名さんの元へと向かった。


「連れてきましたよ」


「ど、どうしたの?」


 椎名さんは何故呼ばれたかわからないようで少し動揺していた。


 俺と姫野さんは先ほど相談したことを椎名さんに説明した。


「わかったわ……今日の放課後は大丈夫よ。むしろ明日だといけなかったわ」


「そっか。なら今日の放課後で!」


「ええ、わかったわ」


 そう言って椎名さんは戻っていった。


「椎名さんとアニメの話するの楽しみですね」


「椎名さんも結構アニメ好きっぽかったし姫野さんも楽しめると思うよ」


 姫野さんもアニメ好きの友達が出来るのが楽しみなんだろうか。

 それに女の子同士の方がいいところもあるだろうし。


「じゃあ今日もカラオケにする?」


「いいんですか? 秋月さん4日連続のカラオケになるんじゃないですか」


「いや、俺は大丈夫だよ。最悪歌わないかもしれないけど姫野さんの歌聞けるならいいや」


 俺がそういうと姫野さん顔が少し赤くなった。


「ほんと……秋月さんはそういうこと恥ずかし気もなく言いますね」


「俺なんか恥ずかしいこと言ったかな」


「全く……でも、秋月さんがカラオケでいいならカラオケにしましょうか」


 ということで4日連続のカラオケが決まった。

 といっても昨日はほとんど椎名さんと話してるだけでほとんど歌ってないし実質ノーカンだな。


「でも、姫野さんも4日連続になるんじゃないの?」


「どうしてですか?」


「だって、昨日俺がカラオケ行ってるって知ってるってことは姫野さんも来てたんじゃないの?」


「そ、そ、そうですね! そう言えばわ、私も4日連続ってことになりますね」


 何故か突然分かりやすく動揺し始めた。

 こんな態度を取られたら気になる。


「なんでそんな動揺してるの?」


「し、してません!」


「んー、ほんとにー?」


「ほんとにほんとにです!」


 口を割らなさそうなのでこれ以上聞くのはやめておこう。


 何はともあれ4日連続のカラオケか……

 そろそろ店員になんか覚えられそうだな。




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