香織
『朝ごはんだけは一緒に食べて欲しい』
専業主婦になる香織に対する翔太郎からの唯一のお願いだった。「そんなことでいいの?」結婚した当時、驚いてききかえした
のを覚えている。専業主婦は家事が仕事だと母は口うるさく言っていたから。休みの日にたまに手伝ってほしいな、育児は一緒にやりたいけど、なんて考えていたから拍子抜けした。
「洗濯とか掃除なら俺もできるし、料理も…勉強する。今はお惣菜も安いしね。だけど、香織と一緒にご飯を食べるってことは香織としかできないから。」
そんな小っ恥ずかしいことも平気でいってのける夫だった。
そうはいわれても、と思い晩御飯を作って待っていたら、帰ってきた翔太郎は「仕事が終わって誰かが待っていてくれるってこんなに幸せなんだね。」と微笑んだ。
そんな一つひとつにときめいていたのはたった2年前の話だ。2年で、何が変わってしまったのだろう。
言い換えたら何もしなくてもいいといわれたということである。香織は自分の必要性が感じられなくなっていた。「料理は…勉強する」といっていた翔太郎は、持ち前の器用さで横文字料理まで作れるほどになっていた。それなのに香織の簡易的な麻婆豆腐を、美味しい美味しいと食べる翔太郎に居心地の悪さを感じずにはいられなかった。
ひろいだけじゃ交わらない 樫水 莉桜 @_rororeva_
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ひろいだけじゃ交わらないの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます