3.平原

さわやかな風が吹き抜け、限りなく見晴らしのいい平原。

道らしい道は人1人通るので精一杯な程度の踏み鳴らされた土が露出している程度のもの。

道のわきには脛ほどの生い茂った草むら。

平凡平和。モンスターの気配すら感じない道の上を五分ほど歩いたその時。


ガサガサッ


「モンスターか!」


身構えるスプリム。


出てきたのはバレーボール大のぷよぷよした青いヤツ。


「なんだ、スライムかよ。ビビらせやがって...」


ド〇クエとは違い、にくたらしい笑顔が張り付いたスライムではなく、

透き通った体の中心部に青い石のようなものが浮かび上がっている姿だ。


「絶対あそこ弱点だよな。」


腰に下げていた石の剣を抜き、大きく振りかぶる。


「スイング」


晴斗自身に武道の心得はない。ステータスの割り振りとスキルのおかげであろうが、スプラムの一撃は晴斗が日本刀を振り下ろしたものより強いであろう衝撃がスライムに直撃し、破裂させる。


...破裂した部分を直ぐに修復したスライムと飛沫を至近距離で浴びてしまったスプリム。


「あっつ!あっつ!!なにこれ!?酸!?」


え...いや、皮膚溶けてるし...。え?これゲームでしょ?え???


ポーションを一気飲みすると溶けた皮膚がなにもなかったように戻っていく。

幸いにもスライムはその場を動かずぷるぷるしているだけであった。


「スライムこっわ...殴打じゃダメだな...。」


脇に剣を抱えるようにして...突き出す!


「あら、あっさり。」


少しの抵抗はあったもののやはり弱点は刺突だったようで核のような部分に触れた瞬間過剰に片栗粉を入れた水のようにドロリと溶け、地面に吸収されていった。


少なくともゲームじゃないのかな...とりあえず次の町までは行って宿屋と、ポーションの補充...スライムが消えた地面は溶けてないってことは核から離すと酸の効果はなくなるんだな...とりあえず先を急ごう。


残った核を素材袋に入れ、再び歩き出す。


すると、スプリムのすぐ後ろで草むらが揺れる。


ぴょこん、と角の生えたウサギが飛び出してきた。


「うわ...ふわっふわだ...触れるかな...っ!?だよね!?」


手が触れる寸前にウサギが跳躍。

狙い定められた左胸への刺突を鎧に掠らせて避ける。


急いで剣を抜き、正眼に構える。


充分な溜めを行った後ろ足を延ばす。


「正面!パリィ!」


下からナナメに振り上げた石の剣がウサギの角を弾く...が、空中で体制を立て直してスプリムに向かって再度跳躍。


「スイングゥ!」


振り下ろした石の剣は角を避け、ウサギの顔半分を抉り、鮮血と脳漿がはじけ飛ぶ。


【レベルアップしました】


「っはぁ、スライムよりやりずれぇ、かわいいうさちゃん...。」


横たわったウサギとぬめぬめした湿った地面...モンスターが残るのも考え物だな...あ!簡易ナイフ買ってたんだった!とりあえず角かなぁ。頭蓋骨硬すぎないか...?


「おっ、取れた。あっ!」


角を取られたウサギは血だまりになってしまった。


「ん~、素材は1体に1個なのか。どこから剥ぎ取るか考え物だな。

おし、レベルも上がったしさっさと次の町へ...おあっ!」


先程より一回り大きい角と羽根の生えたウサギが2羽飛び出してきた。


「両親かよぉ!」

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いらっしゃいませ。異世界屋でございます。 おニート巻鱏 @manta-birostris

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