第45話 みなし児への意志
漢州の人、馬祖は師の
「
「君に勧める、帰郷してはならない。帰郷すれば仏道は行われない。家々の老婆が、お前の昔の名を呼ぶであろうから。」
この
「われ生々にも漢州にむかはざらん。」
と誓願すると、生まれ故郷の漢州に向かって一歩も歩を進めず、江西の一所に自らを一寓したまま、諸方の修行者が彼を行き来したのでした。
馬祖は、ただ即心是仏(この心がそのまま仏である)と説くだけで、他には何も説きませんでした。
「その道理は、われ向南行するときは、大地おなじく向南行するなり。余方もまたしかあるべし。」
江西=馬祖は、どのようにこの教えを会得したのでしょうか。その道理とは、自分が南へ向かって行く時には、大地も同じように南へ向かって行くということです。他の方角でもまたその通りなのです。
――「正法眼蔵/行持/下/(30)」
著書/道元 訳者/吉川宗玄 「道元禅師 正法眼蔵 現代訳の試み」サイトより省略して引用しました。
白っぽくて色のうすい
「こんにちはソルくん。わたしはカトーです。」
おおがらな体をおり、あいさつしました。
「私はあなたのボディーガードけん、
と
しずかな
「ニュースです。ただ今入った
「引き上げられた
「
また、クラッシック
「――これから」
だしぬけに、カトーが語りはじめました。
「きみはこれから、ちがう解放区(学校)にゆくことになる」
「?」
「名前も変わる。きみの名前はソルではなく、今日からは×××だ。とうぜん、
「???」
「きみの
「……」
「ご
「……」
「わるいが、
と、プリペイド
ソルはそれをうけとると、コーヒーをすすりました。彼はコーヒーが
「……ブルックナーの
ニュースのあいまの
「プップップッポーン」
「おひるのニュースです。」
「今朝正午前、クララン市内の
「ホテル側の
「
「つぎのニュースです。――」
青々としたアキニレの葉の
「ここだ。」
ウィンカーがつくと、
やく一か月後。
この一月ほど、ソルは
エリゼに行ったり、
一度タクシーでとおりぎわ(やむをえず、前の生活圏をとおる場合は、なるべくタクシーを利用するよう言われていました)、ホルスによく
彼はまったくヒマでした。ヒマでヒマでしょうがないのに、なにもする気がおきませんでした。ちょっと前まで、アレもコレも、ほしいものがいっぱいあったのに、いざお金が手にはいったら、すべてが色あせて見えました。お金のせいというより、「時間の質」が変わってしまったみたいでした。日がな一日カンオンをなぶっているだけ、そんな
ソルはてっきり、アキニレのマンションちかくの解放区(学校)にかようものと、すっかりきめこんでいました。というのも、そのきんじょで一員(学生)らをよく見かけたからでした。そこらあたりは、さまざまな
やく一年いじょうまたされてから、そことはだいぶはなれた
ルーム(教室)にて。
ソルはみんなの前に立って、あいさつするよういわれました。キャッチャー(教師)のミユキーは一見コンサバ風(保守的)にみえて、そうでもないような、
その
名前だけいって、そそくさ空いているイスにむかい、ハン(班)のみんなにむかってアイサツしました。
やれやれ。この
「――あ、ども」
パートナーとなるむかいの女子に、うやうやしく
彼は
となりの他ハン(他班)の男の子が、元気よくはなしかけてきました。
「オレ、ハル。まえ、どこいたの?」
と、やや
「……うん、なんていうか、外国に」
「どこ?」
「×××××」
「どこ、そこ?」
ボロの出ない、マイナーな
ソルは
「――あ、ひこうきの」
ふいにハルが、クツの小さな
「ははっ(笑)」
ぶきように
「なんの
「ええっと、スポーイ34」
「ふるっw」
ややポリティカル・コレクトネスに
――けっきょく、友だちにはなれないだろうな。
と、このときは思っていました。それは
彼とて、
もとからですが、ふれあい・なれあいの
カンオンでひろったロールモデルの、
「ぴろろろろ~ん」
れんらくが入りました。ハルからです。
ここのところ、ソルはラジコンの
なんとか
リモネンセメント(接着剤)のオレンジのかおりが
あとがき。
この
といっても、ものがたりを
みなし児ヴィデオ・オレンジ 川辺閾 @fennec_fox
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