第3話 夢のような

 カイルは鳥のさえずりで目を覚ました。

 起き上がって周りを見るといつも見覚えのある場所のベッドの上にいた。


「さっきのは良くできた夢だったな。ここじゃない世界があるのか?」


 カイルの呟きが部屋に吸収された。

 カイルは一人暮らしをしていて、家事などもするが掃除は苦手である。普段は魔物などを狩ってお金に換えている。


 この前の日にカイルはある噂を耳にした。ラージタイガーという魔物が畑や森などを荒らして人々を困らせているという。とにかく凶暴で人に襲い掛かり喰われた人もいるという話だ。


「だいぶ力もついて来たから倒しに行ってみるか。懸賞金もかけられてるから頑張りたいな」


 カイルが住んでいる町から西に行った所に、ラージタイガーがいるらしき森があるという。


「ラージタイガーってどんな奴だ?」


 カイルは町の西の広い草原から森に向かって歩いている。


「でかい虎なんだろうな」


 カイルがぶつぶつ呟きながら歩いていると、遠くで獣の鳴き声が聞こえてきた。


「――ついに来たか。ラージタイガー」


  そして、森の奥からラージタイガーが姿を現した。オレンジ色に黒い虎の模様があり、体長が3メートルと普通の虎よりも数倍大きい。爪と牙は鋭く、ラージタイガーが歩いた後は爪痕が付くほどである。


「うわっ、予想よりでかっ…いやビビっちゃだめだ」


 カイルは腰から剣を抜き、戦闘態勢になった。そして、ラージタイガーに向かって走って行った。


 ラージタイガーの前足の爪と剣がぶつかり、カイルは後ろに飛ばされたがすぐに態勢を立て直した。


「これはまずいな。いったん逃げながら作戦を考えるか」


 カイルはラージタイガーに背を向けて走り出した。ラージタイガーも一瞬動きが止まったが、すぐにカイルを追いかけた。


 カイルはどのくらい走っただろうか、もうラージタイガーの音もほとんど聞こえなくなっていた。

 そして行き止まりにたどり着いたとき、そこにあるはずのない物があった。


 古びた扉だった。


「扉が岩の壁にくっ付くかよ普通。開けてみるしかないけど怖いな」


 カイルが扉を開けるのを躊躇していると、ラージタイガーの音が少しずつ近づいてきていた。


「もう来たか。これは行くしかないな」


 カイルが古びた扉を開けると中は白く光っていた。


「これは入れるのか?」


 白く光る所にカイルが手を入れるとスゥーッと通り抜けた。


「転移系の魔法か。どこに行くか分からないけど行ってみるか」


 カイルはそう呟き白い所に入ろうとすると、思い出したように止まった。


「うん?ここまでの動きを知っているような。夢で見たのか?」


 そして、ラージタイガーの唸り声がすぐ近くまで迫っていた。


「まあ、行ってから考えるか」


 カイルは扉の白い所に向かって走って行き、そのまま消えていった。

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逆異世界暮らし ざわふみ @ozahumi

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