朽ちて死 三十と一夜の短篇第40回

白川津 中々

 目の前にある作品は人生の軌跡である。

 日常のふとした気付きや閃きや、鬱屈とした感情を形として残し、他人の目につくよう晒しておいたのがそれだ。

 いずれも俺には大層価値のあるように思える。人から金を取れるくらいの、素晴らしいでき栄えであるように思える。

 しかし結果として多くの人は俺の作品に価値を見出さない。道に落ちる石が如く、視線に入っても気にも留めない。つまりは無意味なのである。


 一筆書き上げる毎に魂が削られていく感覚がある。一文起こす度に命の火が消えていく実感が湧く。だがそれは、数多の人にとってあまりにどうでもよく、あまりに関係がなく、あまりに、興味のないものである。人目に触れられぬ作品が、ただできていく。不毛。


 けれど、されど……


 毎日毎日、少しずつ、文字をしたためる。

 毎日毎日、無意味に、話を作り上げる。

 毎日毎日、俺は、俺は……

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朽ちて死 三十と一夜の短篇第40回 白川津 中々 @taka1212384

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