朽ちて死 三十と一夜の短篇第40回
白川津 中々
■
目の前にある作品は人生の軌跡である。
日常のふとした気付きや閃きや、鬱屈とした感情を形として残し、他人の目につくよう晒しておいたのがそれだ。
いずれも俺には大層価値のあるように思える。人から金を取れるくらいの、素晴らしいでき栄えであるように思える。
しかし結果として多くの人は俺の作品に価値を見出さない。道に落ちる石が如く、視線に入っても気にも留めない。つまりは無意味なのである。
一筆書き上げる毎に魂が削られていく感覚がある。一文起こす度に命の火が消えていく実感が湧く。だがそれは、数多の人にとってあまりにどうでもよく、あまりに関係がなく、あまりに、興味のないものである。人目に触れられぬ作品が、ただできていく。不毛。
けれど、されど……
毎日毎日、少しずつ、文字をしたためる。
毎日毎日、無意味に、話を作り上げる。
毎日毎日、俺は、俺は……
朽ちて死 三十と一夜の短篇第40回 白川津 中々 @taka1212384
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