第5話

翌日、一人で日の高いうちに宇野橋にやって来た。

昨夜は遅い時間に連絡をしたから透と雪乃に連絡がつかなかったと思い、自宅で連絡してみたが、繋がることはなかった。

おかしいと思いながらも、橋に到着すると、夜中に見た五十鈴のミュールは確かに昨日五十鈴が履いていた物で間違いなく、昨日のままそこに残されていた。

橋の周囲を捜索すると、直人の眼鏡が落ちていた。

二人の落とし物には僅かながら血痕が付着していた。

それでも、あいつらの形見だ。

せめて家に連れて帰ってやりたかった。

帰り道、佳奈と一緒に転んだ場所から少し街側へ下りた所に、佳奈がいつも右手にはめているシュシュが落ちていた。

これで、三人。

心が壊れてしまいそうだった。

シュシュが落ちていた場所から少し脇道に入った場所に、昨日は気付かなかった古びた木の看板を見つけた。

風化が激しく読み取れない部分が多かったが、辛うじて読み取れる部分があった。

『宇野橋はかつて殺人を犯した男が逃げ、隠れていた場所である。今でなお、行方不明者は男に殺されているという噂もある。兎の面を付け、鎌を持っているのが特徴。それ故、『兎ノ橋』と呼ばれ、いつしか『卯野橋』と変換され、恐れられるようになった。そして、男の姿を見た者は男によって全員殺される。――――明治――』

最後に『明治』と書かれているのはこの看板が明治時代に建てられたということだろうか。

ちょっと待て。

明治時代で『かつて』というくらいだから、あの男は現在ではもう死んでいてもおかしくない年齢であることは容易に想像できる。

しかし、昨日のあの姿は老人のそれとは大きく違っていた。

むしろ本当の年齢の半分、中年程度に感じた。

もしかしたら、それよりもずっと若いかもしれない。

背筋に冷や汗をかいた。

『ここにいちゃいけない』

踵を返そうとした時、足元で何かが光った。

屈んで見てみると、透と雪乃がいつもしていたペアリングだった。

ということは、透と雪乃も被害に遭っていた。

だから連絡がつかなかった。

ペアリングを拾い上げ、急いで街に向かおうと立ち上がった瞬間、首元と背後に嫌な気配を感じた。

視線だけを下に向けると、赤黒い刃が首に突き立てられている。

振り返りたくなかったが、反射的に振り返った。

そこには血に濡れた兎の面をした奴が立っていた。

『ヨウヤク ミツケタ サイゴ ノ ヒトリ』

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宇野橋 伊崎夢玖 @mkmk_69

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