水面灯篭、空花火

細矢和葉

余所者の目の

 赤い赤い、夕。白い白い、弔いが映える。青く明るい夜闇。二度と暗がりに落ちないように。

 私は水面に流れる灯篭を見ていた。川沿いの蝋燭がゆらゆらと揺れる。はしゃぐ子どもに伏し目の大人。浴衣や下駄の着慣れなさに、この世界の空気が滞る。

 視界は流れて空を見上げる。白い、ただ白い花火。面白味、など微塵も無い。ただそれは余りにも余りにも神聖だった。

 有り余る感情は人を殺すけれど、人を救うのはきっとまた感情だ。冷んやりと冷たい川に私は頭まで浸かった気になって、よく考えてみた。

 花火を見上げる人は皆、きっと考えている事は違うけれど、それが美しく見えるくらいに世界は案外優しかったりするんだ。

 私は明日も水に浸かって考える事にした。どうか、白い弔いを。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

水面灯篭、空花火 細矢和葉 @Neighbourhood

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ