虹の歯磨き粉

古いタオル

第1話テレビCMから


「七色のパワーで歯を元気にーー!」


画面でさわやかな女性が歯ブラシをものすごい勢いで口腔内に突っ込む。


「さわやかぁーーー!」


叫んで、

星の特殊効果がのどの奥から飛び出して画面内を所狭しと飛び回る。

歯磨き粉CMだった。


「ナニあんた、これがほしいの?」


だらんとテレビを見ていた私の一メートル後ろ。

いつの間にか母親が背後に立っていた。

食器洗いにはもう少し時間がかかると思っていたのに。


「欲しい」


「あらほんと?こんなきつい色したのが?」


「母さん流行を否定しちゃーだめだよ」


オバサンまっしぐら。


「絶対タピオカとかも馬鹿にしてるでしょ、あんなののどこがいいのかわからんって」


「あれは別よ、飲みたくないとは言ってないでしょ」


「ふーん」


「なんかすごい歯磨き粉なのね。にゅるんと七色のやつをブラシにのっけてーーー」


歯周病菌を倒す七種類の薬用成分なんだって。


「母さんは?あれ欲しい?」


「別に」


「ああそう」


CMが明けてドラマが始まる。

 

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