第47話
あの後はヒンメルさんとエステルさんに祝福してもらい、その日は王城帰りだと言うこともあり早めに就寝した。
起きた時は夢だったんじゃないかと思ったけど、どうやら現実みたい。
仕事もあるので次の日は予定通りミラへ向けて出発してアーシスに帰った。
後日また王都に向かいヒンメルさんとエステルさんと相談して今後についていろいろと決めることになった。
「エスティエーリルに引っ越せるよう準備しておいてくれ。」
帰り際にあおいさんにそう言われたけど、荷物まとめたりしておけばいいのかな?
アイテムボックスがあるからあんまりすることなさそう。
あ、エスティエーリルに引っ越すってことは仕事も辞めないといけないのか。
でも本当にあおいさんと結婚するんだろうか。
仕事辞めた後にやっぱり結婚しなくなりました、なんてなったらどうしよう。
心配だし次の王都での話し合いの後に会社には伝えようかな。なんて思ってあおいさんにそう伝えたら、引き継ぎもあるんだから早く会社にも伝えろと怒られた。
あおいさんに怒られたので次の日に出勤した時に結婚するので会社を辞めますと伝えたらあっという間に噂が広がった。
清水さんもびっくりしていたけどあの習い事が一緒だっていうイケメンと!?おめでとう!!と祝福してくれた。
清水さんが言うには、前に会社の前で待っていたとんでもないイケメンと結婚するらしいと噂になっているらしい。
花守さんはあれから全く話していなかったけど、トイレで偶然一緒になった時にあんなイケメンとあんたなんて釣り合わないとか、すぐ別れることになるとか、チクチク言われたけど気にしないことにしよう。
あおいさんがなるべく結婚について早めに決めたいと言うので数日間有給をとり王都の公爵家に向かいみんなで結婚についての話し合いをした。
とりあえず会社の引き継ぎに1ヶ月。
その後公爵領の屋敷に引っ越して結婚式準備で半年待って結婚。
高位貴族の結婚で準備が半年って異例の早さらしい。
日本に住んでる私からしたら普通に感じるけどね。
私はお付き合いもしてなかったし、もう少しゆっくりでもいいんじゃないかって言ったんだけどね。
結婚するって決まってからやたらと好意を表してくるあおいさんがそんなに待てないと言うので最短の半年になった。
会社の引き継ぎの1ヶ月はあっという間だった。
あんまり周りと関わってなかったから時にお別れ会とかはない。
清水さんが個別で結婚祝いをしてくれたからいいんだけどね。
会社を辞めてからはすぐにお屋敷に引っ越した。
なんたって半年しかないからね。
結婚式の準備が半年なんてよくあることじゃんって思って舐めてたけど、ごめんなさい。私が間違っていました。
貴族の結婚準備って半端じゃなく忙しい!
ドレスだってお針子さんをお屋敷に呼んでオーダーメイド。お花の種類や招待状のデザイン、料理とか。普通は結婚式場がある程度用意してくれるようなものも自分で決めて手配しないといけない。
招待する貴族の顔や名前や爵位も覚えなきゃいけないし、最低限公爵家に嫁げるレベルのマナーやエスティエーリルについての勉強もしないといけない。
もう本当に結婚式までの半年間は毎日バタバタでクタクタだった。
そうしてあっという間に結婚式当日。
1番心配だった貴族のマナーは結婚式に出れるレベルにはなったとなんとか先生に合格点をもらえた。
当日の朝は早くからしっかりメイドさんたちにケアしてもらってピッカピカに仕上がった。
ドレスは高級感あるレースと布をたっぷりと使用したプリンセルラインのもの。ダイヤと真珠も縫い付けてある。
ジュエリーもびっくりするほど高価なものだ。
ドレスもジュエリーももっとシンプルでいいって言ったけど、公爵家の結婚式だから身分に合わせたものでないといけないみたい。
シンプル過ぎると公爵家が侮られたり、実はお金に困ってるんじゃないかとか、公爵家が望んでいない結婚なんじゃないかとか勘ぐられることもあるとか。
そんなことになるのは嫌なのでシンプル案は却下。
でも公爵家に相応しいものっていうのもまだ勉強中の私が選ぶのは難しいから義姉になるエステルさんにだいぶ手伝ってもらった。
「綺麗だ。」
入場後にこちらに微笑みながらそう言うあおいさんをみると、銀髪に美しい青い瞳に真っ白なタキシード。
もうほんと、王子様じゃん!て言うくらい素敵だ。
あおいさんのもとへゆっくりと向かい手を取る。
「新郎セレスト・オルヴェーニュ。あなたはミドリ・フヅキを妻とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、妻を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「誓います。」
「新婦ミドリ・フヅキ。あなたはセレスト・オルヴェーニュを妻とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、妻を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
あぁ。最初は顔はものすごく綺麗だけど、なんてヤなやつなんだと思っていたのに。
魔法を覚えて、一緒に冒険しているうちに、表情や言葉にださないだけで本当は優しい人なんだと知った。
それからずっと冒険とお店の良きパートナーだったけれど、事件で助けてもらってからは恋に変わった。
こんなに素敵な人が私のことを好きになるわけがないと辛かった。
私にとって1番大切で、私を1番大切にしてくれる人。
この人とずっと生きていきたい。
「誓います。」
そういった瞬間、キラキラとした光が舞い、光の花が天井に咲く。
美しい教会と合わさってものすごく幻想的だ。
「・・・綺麗。」
魔法だよね?
でもこんなの予定にあったっけ?
「サプライズだ。」
そうあおいさんがふっと笑った。
「おめでとう!
ものすごく素敵な式だった。」
「ヒンメルさん、エステルさん!
ありがとうございます!」
「ふふっ。
今日からはみどりちゃんの義姉になるのね。
2人ともおめでとう。」
平民の私が公爵家に嫁ぐことになったのが心配だったけど、2人とも心から祝福してくれている。
「ありがとう。
次に幸せになるのは姉さんの番だ。」
あおいさんに後で聞いたら、エステルさんは女だから政略結婚で使えるとあおいさんが家を出された後も義母とブランに実家に残されていたらしい。
でも公爵家のゴタゴタを知っている人には断られ、政治的に利益のない相手の求婚は義母が断ってきたためタイミングを逃し適齢期を過ぎたまま独身だったみたい。
そういえば最初の頃に貴族は早いうちから婚約者を決めて結婚するのが一般的みたいなのにあおいさんのお姉さんはまだ結婚してないんだなと思ったんだよね。
お相手は王宮に仕える騎士さんで、王宮に行った時に知り合って想いあっているみたい。
伯爵家の次男で、エステルさんに求婚していたが政略結婚には身分が低いと義母が断った中にいたみたいだ。
でももう義母もブランもいないし、ヒンメルさんは自分の経験から相手の人が良い人なら身分を気にする人じゃない。
それでやっと結婚が決まって準備中らしい。
「エステルさん、おめでとうございます!」
「ありがとう。
嫁ぎ遅れてもう私は結婚はできないものだと思っていたけど、好きな人と一緒になれることになって幸せだわ。
みどりちゃんはどう?幸せ?」
私はずっと地味女で、結婚どころか恋すらできないと思っていた。
家族も既に亡くなっていて1人ぼっちだったけど、今日とっても素敵な家族ができた。
「私、幸せです!」
そういうとあおいさんが、私も幸せだ。とこちらに微笑む。
よかった、とエステルさんも嬉しそうだ。
他にもあなたたちに挨拶したい人が待っているから、とエステルさんとヒンメルさんは食事を取りに行ったみたい。
ふと影がさしたと思ったらすぐ近くにあおいさんの美しい顔が。
「愛している。」
耳元でそう言われ、ぞわりと鳥肌がたち顔に熱が集まる。
緊張でおかしくなりそうだけど、意を決してあおいさんの方を向いた。
「私も、あおいさんを愛してます。」
そういうとあおいさんは見たことがないくらい素敵な、満面の笑みを浮かべた。
今日から私が魔法使いの弟子!? sai @maaa8-1117
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