第2話 失態の代償
-人類史上最悪の大災害が起こる数時間前。
「今日!この日!人類は"新たなる世界"を手にする!」
歓声...拍手喝采...人類の進化を讃えるように皆、沸き立っていた。
「おお!上手くいけば、発表して世界的にも大ニュースですね!」
全国から集まった多くの研究者や学者、出資者など、様々な関係者、観測者が巨大スクリーンの前で現在宇宙にある衛星との通信を嬉しそうに眺めていた。
彼らが研究し、生み出した技術は間違いなく"世界一"だ。
『このプロジェクトが成功すれば人類にとって新たなる一歩となる、人類を次なる舞台へ進ませてくれる!』
...そう誰もが思っていたモノだ。
「この、疑似ワープホールを生成する技術を使えば、どこでもドアだって作れちゃいますよ!」
「ハハハ、夢が広がるね!」
彼らは
当然、彼らは失敗したとしても理論が再現されないだけ、そう思っていたからだ。
「博士、第一生成、完了です」
「ああ、座標の設定と、第二生成の準備にかかりなさい」
宇宙で浮遊する衛星の横にワープホールが生成される。
これが第一生成、入り口に当たるワープホールだ。
「第一生成が成功したのなら理論に間違いはなかったようだ」
「もうすぐ、僕らの夢が叶いますね!」
そう、理論に間違いはなかった。
だが、致命的な狂いはあった。
「第二生成完了です、有人宇宙船
「成功すれば、月へ到着するはずだ...!」
宇宙でこの疑似ワープホールを生成した理由はコレだ。
月には既に人類は到達している、しかし、月へワープした事例など当然ない。
この試験運用が成功すれば、また出資を受けられ、本格的に疑似ワープホールを利用した宇宙開発が始まる事だろう...。
「...⁉︎大変です!疑似ワープホールの座標がズレています!コレは...太陽系外です‼︎ 座標を再確認します!」
「何⁈マズイ、直ぐに中止させるんだ!」
「しかし...信号が受け付けられません!」
「疑似ワープホールの影響か...
予定時間から少し遅れて、白兎からの通信を受信する。
「こ...ちら有人...宇宙...ハク...ト!ワ...ホールを......過中!現在...何か...こうそ...接近中!至急連絡...ます!ヒッ」
ブツッ...っと連絡が切られた音。
何故か怯えながら震えた声で必死に助けてを求めるような、ノイズの入った通信...。
その様子は"尋常ではない事が起きている"事を察せられる程のモノだった。
衛星に乗っている人物であれば、あらゆる事態でも冷静に判断を下し、対応する訓練を受けている。
つまり、それ程の何かがあった事を意味する。
「どうした?何があった?まだ引き返せるはずだ!戻ってきなさい!戻るんだ‼︎」
試験運用でこの予想外の事態、責任者は焦っていた。
「先生、現在のワープホール先の座標値を割り出しました!...見て下さい。」
「何?...457億光年先だと?有り得ない!試験運用段階である疑似ワープホールには、そこまでの"パワー"は無い
「ですが、通信が来たという事は疑似ワープホールを介して通信が来たという事。」
「それでは、彼らはもう・・・。」
座標の狂いにより起きた事故。
宇宙船に乗っていた人員は地球に帰る事すら出来ない。
この時、直ぐにワープホールを閉じていれば、
「くそっ!何故だ⁈ 仮に座標を間違えても宇宙船の自動帰還システムで戻ってはこれたはずだ!」
「不自然です...ワープホールは今も開いています。」
「何故彼ら...あの船は帰ってこなかった?」
「先の連絡、通過中に何か事故が起きたのでしょうか?」
ワープホールの中で故障でも起きたのであれば、彼らは冷静に行動できたはずだ。
彼らが冷静さを失うのは、例え想定外の事であってもほぼありえない。
「事故ではない、のか?」
「では一体、彼らに何があったと言うのですか!」
「分からん、だが、嫌な予感がする。何か、"理解し得ない事"が起きている」
ブチッ。という音と共に再び通信が入る。
それは今は亡き者達が最後に残した言葉。
そして、人類への警告であり、同時に"死の宣告"でもあった。
我々には、まだ早すぎたのだ。
「...コレが最後の連絡になるでしょう!...我々は助からない...ですが、伝えなければ!...全人類が危機に..,」
『ビッービッー』と警告音が
「ど、どうか信じて...巨大な...がいる...です!」
音声に雑音ノイズが混ざり、聞き取るのが難しい。
「アレ...来れば我々...滅びます!直ぐに......閉じてください!」
「息子たちのいる地球にアレを招いてはいけない!」
船がひしひしと音を立て、
宇宙船外から何か"凄く強い力が加えられている"のが分かる。
...すると『バキベキ』という大きな音を最後に通信が切れた。
「な、なんだ・・・一体、何が起きているんだ‼︎」
会場は混乱と恐怖に飲み込まれる。
「先生、一体彼らは何を見たと言うのでしょう?」
「くっ、直ぐにワープホールを閉じろ!彼らの死を無駄にするな!」
その言葉を聞き、直ぐに研究者は動き出そうとする...が。
スクリーンには衛星の映像が映し出される。
その瞬間、全員その場で固まる。
まるで、"
そこには、真紅の瞳のような巨大な球体が
宇宙船より大きな瞳...の様なソレは徐々に遠のき...船とは逆の方向、
その異形...姿がワープホールに近づく
翡翠色の触手に真紅の瞳、言葉では形容できない。
-正に化け物。
「な、な、こ、コレはなん、だ?」
「せ、先生、コレ!こっちに向かってませんか⁈」
...人類は失敗から多くを学んできた。
いつの時代も
では、今回は?今回も"失敗"から学べるのか?
-
コレは取返しのつかない"失敗"だ。
人類は文字通り"致命的な失態"を犯したのだ。
神秘の侵攻~五回目のラグナロク 光合成する森ロボ @hutaridehitori
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