ミニマム彼女は大きくなりたい。(仮題)

@tsukunyan

とある乙女の独白タイム

私は「自分」が嫌いだ。嫌いの度合いは様々あるが、私の場合は最大級。この世界中の誰よりも、自分のことが嫌いだと言っていい。

「なぜ嫌いなのか」と問われると、それは「私」が「低身長」であることに他ならない。


私の名前は小叶心春(こがないこはる)。この度高校二年生になる16歳だ。身長は現時点で145cm。

16歳というと、思春期の後半に差し掛かろうとしている時期だ。その時期の女性の身長にしては、私はかなり低い部類の人間になる。そして嫌いな言葉は「小さい」全般である。


話は変わるが、思春期の人間にとって身長というのはとても重要なステータスで、小さければ小さいほど不利だ。

覚えのある人も多いだろう。多くの人間が取り組むであろう部活動ーー、主にスポーツに関しては身長が大きく影響してくる残酷な世界だ。競技によっては小さければ小さいほど担える役割は少なくなっていく。加えて小さいことがメリットであるスポーツなんてそうそうない。結果、低身長の人間は特段上手でもない限り、スポーツの世界では生き辛い立場なのだ。

また、身長が小さいというだけで「自分と見た目が少し違う」「自分より弱く見える」などの理由からいじめや嫌がらせに遭う例だってある。

私生活にだって支障はある。身長制限を設けたアトラクションに乗れなかったり、コンサートに行った際に人の波で前が全く見えなかったり、一人で歩いてたら迷子の子供だと思われたり、可愛いと思った服がサイズが全然合ってなくて購入を断念したり、(当人にとっては)高所に置かれた商品をいちいち店員さんに取ってもらう必要があったりエトセトラエトセトラエトセトラ…。兎に角、小さいということはとてもとても不利なのである。


そして前述した事例は全て、私が辿ってきた過去の出来事でもあるーーー。


私こと小叶心春は物心ついたときからミニマムな人間だった。小さな体で育ったが故に、幼少の頃より同年代の男子からのいじめ(今となっては思春期特有のあれだったのかもしれない)や嫌がらせに遭い、低身長であるが故の苦悩と挫折を味わってきた。


小さいからってバカにしないで。

小さいってだけで人を下に見ないで。

小さいからって子供扱いしないで。

小さい見た目で人を判断しないで。

小さいことはいけないことなの?

小さい自分が悪いの?

そうか、自分が小さいからいけないんだーーー。


って感じに。その度に小さい自分を嫌悪するようになり、自己に対する捻じ曲がった思想と価値観を持つようになった。


だから、自分を変えようとした。

「大人」になろうとした。

「上に立つ者」になろうとした。

「自分には出来ない」をやろうと努力した。

髪型も、言葉遣いも、身形も変えた。慣れない化粧だってした。勉強もスポーツも隠れて努力した。勿論、身長を伸ばす努力や方法も怠らなかった。

「小さい」という事実へ覆い被せるように、少しでも「悪」である自分を隠せるように、自分自身を変えていった。それが中学2年の時。


でもそれらは形にはならなかった。徒花、咲いても実を結ばない花。

いくら大人びたメイクや衣装で自分を着飾ったところで似合わなければ不調和、違和感でしかない。勉強もスポーツもいくら努力しようが上には上がいて、上に立つどころか見上げる始末。勿論、身長は伸びなかった。

結果として、私は己の小ささを覆すどころか、ますます己の矮小さを自覚し、自分自身を忌み嫌うのだった。



……以上が今に至るまでの私、「小叶心春」という自分大嫌い人間の半生。自己嫌悪と劣等感が支配した16年。他人から見れば「小さい」ことなのだろう。でも私にとっては何よりも大きな弊害だったのだ。本当に。

そしてこれからも私は、私のことを嫌い続けていく。自分を否定し続けるのが私の未来。自分のことを肯定……好きになることなど絶対に無い。そう思っていた。


ーーーが、それを間違いだと気づかせてくれる人が、自分を否定し、嫌いになることしかできなかった私が変わるきっかけをくれた人が居た。居てくれた。



これは私が自分のことを認め、受け入れ、好きになるまでの物語。



この出会いが運命じゃないなら、きっとこの世界に運命なんて言葉は存在しない。





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