オレのファイナルブレーキ!
こねこちゃん
【いきなり最終話】 決戦! 魔王ヴォラギノウル!!
「……どうしてこうなった」
ここは魔王城、魔王の間。
にも関わらず、だ。
オレは魔王の玉座に腰かけ、後悔全開で脂汗を垂れ流しながら頭を抱えていた。
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数分前。
『ぐはあああ……!! 我の……我の心臓のファイナルブレーキが!!!』
魔王は驚愕の表情をそのほとんど骸骨の顔に浮かべ
魔王ヴォルァギノウルは
そんな彼には七つの
オレは今しがた、ヤツのその七つ目の
魔王は『ふははは、心臓全てを破壊しないことには我に勝てぬぞ』とかドヤっていたのだが……何てことは無い。
現代日本から勇者として異世界転生したオレにとって、七つと言えばアレだ。
胸に七つの傷があるアレだ。
オレは「おあたたたたたたっ」と奇声をあげながら、その配置とおり上から順番に貫いていったところ、ビンゴだったというワケだ。
うむ。魔王も現代日本からの転生者だったのかもしれないな。知らんけど。
……おまえはもう、死んでいる
『……まあ、アンデッドですからね!』
そうでしたね!
お約束ですね!
『お……おのれ、どうして我の
魔王は苦悶の表情を浮かべ、憎々し気にオレを睨む。
おや? ヤツがいま手で押さえてるのは破壊された
『ふふ……ふはははは。我には七つの
聞いてもいないのに魔王が語りだしたぞ!
『ここにもうひとつ心臓……
死〇星ですかな!?
まあ、わざわざ教えてくれてありがとな!
ではサクッと。
『ままままままてーい!
魔王の口元がニヤリと歪む。
『……まあ、どのみちあと数分で爆発するのだがな』
えっ。
どうせ結果が同じなら今やっとくかな。
オレ、
『ままままままてーい!
何でもいいけど、ブレーキブレーキうるさいな!
『この魔王城どころかこの国……いや、大陸ごと吹き飛ぶことになるぞ!』
えっ。
それってちょっとヤバい感じ?
『ふははははは。お前ら人間どもも道連れだ!』
あっそう。
そう言ってその通りになった物語をオレは知らないね。
これは勝利へのお約束フラグだな!
一種の安心ワードだわ。
『……と言いたいところだが、それは我の本意ではない』
えっ。
なにそれ。オレの安心を返せ!
『ぬう……、勇者である貴様に頼み事をするのは癪ではあるが、今はそうは言ってられぬ。勇者よ、今ならまだ間に合う。
えっ。
なんでオレが?
『悔しいが、配下の魔族どもも道連れにすることは、我も本意ではないのだ……』
じゃあアンタが自分で止めて!
『それは無理な相談だ。まあ聞け。
またブレーキ連呼しはじめたぞ!
てか、ファイナルブレーキの最終ブレーキって何だよ!
『その秘密は我の玉座に封印されておる。その名も
まだブレーキ連呼するか!
……って、ちょっと違うな。
紛らわしいわ!
『ふふふ、勇者よ。呪いの武具たる
知らねーよ!
魔王は『そう、これは呪い、呪いなのだ!』!とか両手を天に掲げて叫んでるぞ。
自分語りにも熱が入ってきたね!
あれ? 瀕死じゃなかったっけ?
『そう、
いや答えてないのに『そう』とか言われてもね!
『だがな、
どうでもいいけど、溶かして役立つ
『誇り高き
うわっ。
なにそれ迷惑!
死ぬならひとりで死ね!
『
……。
オレ、まだ何もしてないからな。
『いま一度言おう。魔王たる我の存在は、
ブレーキブレーキうるさいな!
てか、いまアンタ魔王殺しのことをデーモンブレーキって言ったよね?
言ったよね!?
ねえ、ワザと? ワザとなの!?
『そう、
また新しいブレーキ増えたね! 増えたね!
あー!!!!
もうなんか、おめでとう!
『ククク、我の存在は必要悪だったというわけだ』
言いくるめられてる感あるけど、そうなんだ!
なんか、ありがとう!
『話を戻そう。ひとつだけ、そうひとつだけ
それは?
『貴様が魔王になればいい』
……は?
『簡単な理屈だ。
いやオレ勇者だし。
『魔王になるのは簡単だ。魔王の玉座に座り、新たな魔王であることを宣言するだけでいい』
魔王はそう言いながら後方を指さす。
そこには如何にも魔王のものらしい、沢山の
……いやいや。
ない。
オレユウシャアルヨ?
ないない。
ないわー。
だいたい罠だったら嫌だからな。
オレは慎重な男なのだ!
……おや? なんか魔王が泣き出したぞ。
キモいんだけど!
『頼む勇者よ、同朋を……そして我が3歳になる息子、
おい! なんだよその名前!
あざとい! あざとすぎるわ!
もし本当にその名前なら、次元を超えて
てか、衝撃的すぎて、「あれ? アンデッドってどうやって子供作るの?」って疑問も吹き飛んだわ!!!
『勇者よ。世界を救え。我が
くっ……。
それを言われると弱い。
今までだって、仲間たちを含めどんな犠牲を払ってでも世界を救うためにここに来たのだからな。
『大丈夫だ。貴様なら……貴様なら人間と魔族を束ねる真の
魔王の落ちくぼんだ眼底が優しく綻んだように見えた。
魔王、オマエって奴は……。
わかった。
やる。やってやる。
ここでやらなければ、勇者の名が廃る。
そもそも、オレの防御力は+99MAX、精神防御も+99MAX、毒耐性・呪い耐性等ほとんどのステータスは+99MAXのオレtueeeeee状態である。例え罠だとしても、オレに傷つけることはかなわないはずだ。
『行くのだ、勇者よ! ぐふっ!』
おう!
オレは走り出し、その勢いのまま魔王の玉座に飛び込んだ。
—————————————————————————————————————
「……どうしてこうなった」
いまオレは魔王の玉座に腰かけ、後悔全開で脂汗を垂れ流しながら頭を抱えていた。
どうしてって……端的に言えば
魔王は先ほど息絶えた。
オレは玉座に勢いよく腰かけた際に
にも関わらず、
……いや、そもそも
要するに、このあたりは魔王の虚言であったということだ。
ならば、さっさとこの忌々しい玉座から降りればいいと思うかもしれない。
そうしたいのは山々だが……、いまオレは、
—————————————————————————————————————
再び少し時間を戻そう。
ぐはあああ……!! オレの……オレの
オレは突然、想定外の激痛を感じ、そう悲鳴をあげていた。
魔王に背中を押されたオレは走り出し、その勢いのまま魔王の玉座に飛び込んだ。
そこで気付いたことがあるのだが、魔王の玉座にはえた無数の棘は、なんと背もたれや座る部分にまで生えていたのだ。
(余談ではあるが、魔王はほぼ骸骨なので骨の隙間に棘がくるように配置されていてノーダメージで座れていたようだ)
だが、そこは問題ではない。
オレの装備はペルセウスの兜、ゼウスの鎧、トールの小手、ヘルメスの靴と
しかしながら問題なのは、防具の構造上、唯一防御が届いていない部位があったのだ。
魔王の玉座の棘は勢いよくオレの肛門括約筋を突き破った。
そのあまりの激痛とご丁寧にも簡単に抜けないための
玉座に隠されていたのはデーモンブレイカーではなく、コーモンブレイカーだったとはね!
HAHAHA!……って、笑えねえし(怒)
うほっ!
い……いかん。怒りで思わず力を入れたら余計にダメージを喰らったぞ。
ぐおおおおおおお!
ぬうう……。
俺のアナルは処女だったんだ。
こんなことなら黒騎士”ダークザーゲン”との闘いの前のジーフォ(戦士♂コワモテゴリマッチョ)の願い……『勇者、明日の黒騎士との闘いでおそらく俺は死ぬだろう。だから最後のこの夜に、オマエを抱かせてくれないか。うほっ!』を叶えてやっていれば、今よりはユルく慣らされていてここまでのダメージは無かったかもしれないのに!
……はっ! オレは何を考えてるんだ!
オレは前世では酷い痔持ちであり、それは酔っ払って駅で寝てたとき黒人に攫われてア———ッ!!されたのが原因だ。
黒騎士との闘い後ギリギリ生き残ってたジーフォに、「前世のアナルの
ふう、すっかり取り乱していたみたいだな。
冷静になれ、オレ!
そう、こんな時は最大神聖魔法を使えるエフレーチン(神官♂オレよりモテるイケメン)に回復魔法を……って、彼は魔王城の門番のゴーレム”ジ・ナンコー”との闘いの際、
ひーっ!!!
……! そうだ!
スピードスターの二つ名を持つリシーナ(♀体だけはいい)にひとっ走りしてもらって上位神官を連れてきてもらって……って、彼女はオナホ替わりに連れてただけで、飽きたわ戦闘に役に立たないわだから騙して奴隷商のヴィザックに売っちまったんだった!
どひゅーっ!!!
ぬぅ、この世界の回復魔法は時間が経てば経つほど完全回復できなくなるの!
もう無理っぽ?
詰んだ?
コレ詰んだってヤツ???
ぐあぁぁぁぁぁ!! なんてこった!
仲間たちの尊い犠牲が、無駄になっちまった!
うおぉぉぉぉぉぉ、クソがあ!
やってくれたな魔王、殺す! ……って、そこでもう死んでるし。
なんだよ、その満足そうな死に顔は!
……ああ、ここに来てまたブレーキ? え? ブレイク? 何でもエエわ!
なんか、おめでとうだね!!!
くそがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
うわぁぁぁぁぁん、助けて、お母ちゃ~ん。。。
勇者の悲痛な叫びが魔王城にいつまでも
こうして、勇者の
めでたし、めでたし。
魔王の魂『てへぺろ(・ω<)』
【作者より】
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作者が小躍りして喜びます(*‘ω‘ *)
オレのファイナルブレーキ! こねこちゃん @coneco
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