ACT4

 依頼は無事に済んだ。


 俺は田園調布にを届け、そのままジョージに新宿まで送って貰った。

 

 後から電話があり、あの『人間不信』の元社長にしては随分長々しい礼と、それからギャラを倍増ししてくれた旨の言葉を伝えてきた。


 俺は風呂に入り、とっときのバーボン、ワイルドターキーを出して数杯煽った後、そのままベッドに寝転がって眠ってしまった。


『彼女』・・・・つまり、宗形冴子が事務所オフィスに現れたのは、翌日のことだった。


『これを御覧になる?』


 勝ち誇ったような口調で俺に言う。


 大ぶりのバッグから彼女が取り出したのは、小型のポータブルDVDプレーヤーで、そこにはこの間のあの『カーチェイス』の一部始終が録画された映像が収まっていた。


 俺は黙ってその映像を最後まで観た。


 彼女は俺が驚いたような反応を示すかと思っていたようだが、全く表情を変えなかったので、変に顔を歪めた。

俺は机の引き出しからプラスチックのケースに入った、ラベルの貼っていないDVDを引っ張り出して来て、それを彼女のプレーヤーと入れ替えて再生をした。


 そこには、彼女が見せた映像を『』から撮ったものが写っていた。


『ドライブレコーダーで録画したのさ。それをDVDに焼いて貰ったんだ。君がさっきの映像をどこに持っていこうとしているのか・・・・まあ聞かなくても大体分かるさ。だが、そうしたら俺もこの映像をネットに流す。世間が俺と君・・・・どっちのを信用するか・・・・競争でもしようじゃないか?何なら金を賭けてもいいぜ』

 

 俺はDVDを取り出し、元のケースにしまった。


 彼女は下唇をみ、凄い目で俺を睨みつけた。


 さっきと表情がまるで変っている。


『・・・・汚いのね。それでも探偵?』


『何とでも言えよ。俺は俺のやり方を貫く。not your business!』

『え?』

『「あんたの仕事じゃない」もっと砕けて言うなら「お前にゃ関係ない」さ。英語くらい分かるだろ?』

 俺は椅子に腰かけ、デスクに足を組んで頭の後ろで腕を組んだ。


『用事が済んだらもう帰ってくれ。これから客が一人来るんでね。』


『・・・・・』

 

 客が来るなんて嘘だ。


 彼女は荷物を片付けると、もう一度俺を睨みつけ、


『どうなっても知らないわよ!』


 捨て台詞を残して事務所を出て行った。


 さて、その後どうなったかって?


 ついこの間彼女がテレビのトークショーで『銃規制云々』について持論をぶっているのをちらりと見かけたが、あの時の『』は出てこなかった。


ま、そんなことはどうでもいい。


 俺は俺のやり方でやってきた。


 これからも続けていくつもりだ。


 一匹狼でメシを喰っていく気がなければ、当の昔にライセンスもバッジもほうりだして、田舎に引きこもっているさ。


                              終わり


*)この物語はフィクションです。従って登場人物、事件、その他全ては作者の想像の産物であります。












 



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not your business! 冷門 風之助  @yamato2673nippon

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