ACT3

 俺は左わきにぶら下げたホルスターから、M1917を抜く。


『旦那、良かったら足の下を見てみな』

 

 ジョージの言う通り、俺は座席の足元を探った。そういえばさっきから何かが当たるので気になっていたのだが。


 そこにはグレーのケースが置いてあった。


 俺は『荷物』を横に置き、シートの上に持ち上げ、ふたを開けてみると、そこにはS&WM500の8・3/8インチバレルが、銀色に輝きながら横たわっていた。


『こんな時もあろうかと・・・・って奴さ。前にもあったよな?似たようなこと。狙い撃ちされた時M1917じゃ心もとないと思ってさ』


『悪いが』


 俺はそういってふたを閉じ、元通り足の下に押し込んだ。


『なんだよ。折角持ってきてやったのに、使わねぇのか?』


『武器に関しちゃ浮気はしない主義でね。第一俺はマリリン・モンローより芦川いづみのファンなんだ』


『貞淑なこって』


 ジョージは苦笑した。


 俺は後部座席のウィンドを下ろすと、半身だけ外に乗り出すようにしながら、狙いを付けた。


 向こうはライフルを構えなおし、二発目の射撃姿勢に入った。


 俺は躊躇うことなく、三連射した。

一発はフロントにもう一発はライフルを構えた男の右腕に当たり、男は姿勢を崩してライフルを落とした。


 向こうは急ブレーキをかけるのに精いっぱいだったんだろう。コマのようにニ三度車体を大きく揺らして止まった。


 ジョージはそのままアクセルを一杯に踏み、距離をぐんと引き離した。



 

 それから後の事はだらだらと書いたところであまり意味があるとは思えないから、取り敢えず省略することにしよう。


 まあ、いつもの如しだ。


あれから東京へとあと5キロほどへ迫った時、県警のパトカーが後を追ってきた。


 仕方がない。


 指示通りに俺達は停車し、降りてきた警官に胡散臭そうな顔で尋問を受けた。


 俺は探偵免許を出し、仕事中だと断ると、それでも車内を見せろという。

 

 だが、ここは後には引けない。


『これは正式に依頼を受けたものだし、向こうが撃ってきたから応戦したまでだ。信じてくれとはいわんが、どうしても調べるというなら、依頼人に断ってからにして欲しい。』


 俺があくまで喰い下がると、警官むこうもぶつくさ言っていたが、しかしこっちはウソを言っているわけではない。


 警官はとうとう折れて、


『じゃ、仕事が終わったら県警に出頭しろ』と苦い顔で言い、そのまま立ち去っていった。


 パトカーが行ってしまった後で、野次馬の中に、あの宗形何とかいうフリーのジャーナリストの姿を見つけたが、俺は素知らぬ顔をして、そのまま車に乗りこみ、ジョージに、


『出してくれ』とうながした。





 


 



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