第6話 『猫絵十兵衛御伽草紙』
このエッセイですが、この回にて最終回とさせていただきます。
何故って?タイトルにもある通り、私は狭く浅い知識の人間です。
今現在、心を掴まれている漫画が少ないのです。
ですので、最後にこの漫画の事を書いて、終わりたいと思います。
何故この漫画で終わりかということですが、今まで私が書いてきた漫画作品たちは、不気味な雰囲気だったり、怒涛のストーリー展開があったり、大作だったり、とどれも激しい感情に見舞われるものばかりでした。
なので、最後に皆さんに穏やかな気持ちで終わっていただきたく思い、この漫画を選びました。
前置きが長くなりましたが、この漫画の「猫絵」ってなんぞ、という人、多いと思います。これは江戸時代に実際あったもので、猫の絵を書いたまさしく猫絵を、鼠がよく現れる場所に、鼠避けの祈願として貼っておくのです。ようするに、猫よけ水入りペットボトルのようなもの。
実際に効果があったのかは謎ですが、実際にこの猫絵を売る、猫絵師が江戸にはいて、主人公はまさしくこの猫絵を描く猫絵師なのです。
さて、この物語、実はファンタジーな江戸が舞台です。
何故ファンタジーなの、というのは、登場人物の紹介をしながら説明していきます。
まず、主人公の十兵衛。舞台は江戸、住んでいるのは長屋、というのにもかかわらず、髪の色が薄く、おまけに髷も結ってません。
当時の江戸では、髷を結ってないとお役人さんに怒られたそうです。怖い、江戸時代。
それと、ちょっとした十兵衛の特技が、ファンタジーさを醸し出しています。
次に、十兵衛の飼い猫ニタ。珍しい雄の三毛猫ですが、実は、猫又なんです。
しかも、ちょっと不思議な術も使えるというおまけつき。喋れるし煙管も吸います。とってもファンタジー。
ただ、このニタ、顔がでかくあまり可愛く描かれてはいません。ただ、そのブサイクなところが可愛い、と思ってしまうのは、私が猫派だからでしょうか。
そして舞台ですが、このファンタジー江戸、ファンタジーと言っても、実に事細かに、そしてそれをなるべく平常として、江戸の町を再現して描かれているんです。
江戸時代って、徳川家の時代だよね?16代将軍様で終わったんだっけ?とかいう知識の浅い私でも、お、と思う描写が各所に出てきます。
たとえば、1~2コマだけよく出てくる、物売りに歩く人々です。私は知らなかったのですが、江戸時代では、こういった、いわゆる昔の豆腐屋さんのように「豆腐~豆腐~」といいながら豆腐を売り歩いていた人や、朝顔の時期になれば、「朝顔~朝顔~」と朝顔の鉢を売り歩く人がいたそうです。
そんな、かつてあった江戸を、よく調べてあり、それが細かいところでリアリティを出しているのです。
そして肝心のストーリーですが、十兵衛とニタが暮らしていったり、猫絵の仕事のため、旅をしたりする中で、出会った人々や猫又、猫又未満の猫たちなどが、日常の中で遭遇するちょっとした事件をおさめる、というのが主軸です。
いわゆる日常系。しかし、その中にはじんわりと心が温かくなるようなお話だったり、はたまたほろりと来るお話だったりが詰め込まれています。ちょっと緊迫するエピソードがでてきたりもしますが、次のお話をよめばすぐほっこり。
ですので、壮大なストーリーを求めていたり、独特を求めていらっしゃる方には、物足りないかも知れません。
ですが、今まで書いてきたお話の中で、一番、今心穏やかに読めるのが、この『猫絵十兵衛』なのです。
十兵衛とニタ以外にも準レギュラーな登場人物たちや猫たちもでてきますが、語り尽くせないのが現状です。
私は第2話で書いた、『うしおととら』で、妖怪にハマった自覚があります。
次に、和物。要するに日本してるものが好きです。着物も大好きで、一人で簡単な着方でしたら、着付けできるようにもなりました。物事を深く掘り下げないことに周りから定評のある私ですが、そこまで和物に入れ込めたのは、日本魂ってやつでしょうか。
最後に、猫。先程も書きましたが、私は猫派です。お犬様やそのご家族の方には申し訳ないのですが、あの遠慮も加減もなく「構って!!構って!!」って迫ってこられるのが、苦手なのです。なので猫派。実際甘えたなやつですが、猫も飼っています。
ですから、この『猫絵十兵衛』は、猫又という「妖怪」、江戸時代という「和物」、必ず登場するのが「猫」という、まさにドンピシャな物語でした。
ちなみに、この『猫絵十兵衛』、当時の着物の着方や、猫の飼われ方まで、細かく描写されています。
そこに確かにある、『御伽草紙』が、リアリティをもって、心に響いてきます。
そんな穏やかな『御伽草紙』をもって、このエッセイをしめさせていただきます。
最後に、「絶対好きだから読んでみなよ!」と勧められても、食指が動かないと一切読まない私が、最近興味を惹かれたのが、『ギャラリーフェイク』という漫画です。表紙だけで見たら、絶対に読んでなかったと思います。
しかし1話だけネットで無料公開されていたので読んだのですが、「お、これは!」となりました。
ですので、また機会がありましたら、このようなエッセイを、また書かせていただくかも知れません。
では最後の最後に、この話だけ読んでくださった方も、いくつか読んだよ!という方も、それ以外の方も、ここまで読んで頂き有難うございました。
これにて、閉幕、閉幕。
狭く浅い知識の人間が行く、漫画紀行。 小織おこ @okoice
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