026  弓使い VS 弓使い Ⅰ

 祐斗が戦っている一方————


 瑞希は、ギルド本部から離れた場所に向かっていた。


「おいおい、あれだけ戦闘は控えろと言ったのに、あの二人は……」


 瑞希は頭を悩ませた。


 地上に出た後、爆発音が遠くの方からしっかりと耳元まで聞こえてくる。


「ま、そのおかげでこっちも自分の仕事がやりやすいんだけどな……」


 瑞希は、走り出した。



     ×     ×     ×



「さて、ここで足止めを喰らっているわけにはいかないな!」


 大河は大量の敵を戦闘不能させた後、ギルド本部に向かって再び走り始めていた。


「それにしてもこうも簡単に敵がうじゃうじゃと出てきているって事は……俺の居場所ってもう、敵にバレている……」


 大河はようやく気付く。


「それって……まさか……」


 嫌な予感がする。こんなに簡単に物事が行き過ぎている事に。


 だが、大河の予感は的中していた。


 建物の陰から大河の方を狙っている人物がいる。弓を弾き、しっかりと相手を狙い定める。


「侵入者か……」


 矢を放つ。


 ピュッ!


 大河の耳に矢を放つ音が微かに聞こえた。


(今のは‼)


 気づいた時には、こっちに矢が飛んできた。


 ドンッ、ドンッ、ドンッ。


 大河は辛うじて避け、矢は地面に突き刺さり、そのまま消滅した。


「魔力の矢……」


 射てきた方向を見る。


 屋根の上に人影が見えた。太陽のせいでシルエットくらいまでしか分からないが、大河を狙ってきたのはそういつだと確信する。


「今の避けるか……。侵入者にしては面白い奴だな。だったら!」


 大河を狙った人影は再び、大河に狙いを定める。


「『雷鳴の雨ライト・アロウ』‼」


 第二射を放つ。


 雷の矢が無数に大河に向かって飛んでくる。


(マジかよ! 連続で来るのかよ‼)


 大河はすぐに弓を展開させ、敵と同じ本数の魔力の矢を放つ。


 矢と矢がぶつかり合い、爆発と共に消滅。


「くっ……」


 大河は、爆風に巻き込まれて後ろへと少しずつ下がる。


 強さは互角、いや、それ以上の戦い。遠距離攻撃のぶつかり合いが、周囲に被害を及ぼす。建物のレンガが崩れ、屋根瓦が吹き飛んでいく。


「なるほど。目には目を矢には矢をか……」


 大河を射た張本人は、すぐに屋根を飛び移り、大河の方へと素早く距離を詰めよってきた。


(こっちに来る!)


 敵の行動に大河も気づき、素早い反応を見せる。


 次の攻撃、そして、次の攻撃へと攻撃パターンを何通りも頭の中で考える。


 弓使いは、接近戦はあまり得意ではない。


「貴様か。侵入者っていうのは?」


 大河の目の前には敵である男がいる。


「だからどうした?」


「目的はなんだ⁉」


「お姫様の救出だ‼」


「お姫様?」


「ああ……」


 二人の間に風が吹く。


「そういう事か。あの魔女を救いに……」


「魔女じゃねぇ! お姫様だ‼」


 大河がいきなり矢を放った。


 男は大河の攻撃を簡単に避けきって話を続ける。


「おいおい、話している最中に攻撃するなんて野暮じゃないのか?」


「だったら何だって言うんだ? 俺は急いでいるんだよ‼」


「そう焦るな。俺だってこっちに命令で動いているんだ。相手をしてくれたっていいだろ?」


 男はニヤッと笑う。

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