025 開戦 Ⅱ
男はニヤッと笑った。
「そうかよ。だったら、俺も一瞬で終わらせてもらうぞ‼」
「一瞬か、面白い。だったら、俺も最高の魔法と技で挑ませてもらうぜ‼」
男は、呼吸を整えながら二本の剣で祐斗に立ち向かう。
祐斗は、両手でしっかりと刀を握りしめ、構える。
二人の呼吸は同じように脈に伝わり、血流が静かに流れる。
そして————
二人は同時に動き出した。僅かに男の方が一歩速い。だが、祐斗は『空移』を最小限に抑え、一気に詰め寄る。祐斗と男の差は、残り五メートル。体格のいい男に対して、祐斗は懐から入ろうとする。
「クロスオーバー‼」
男が魔法名を叫ぶ。
「紫電一閃‼」
祐斗も自分の魔法名を叫ぶ。
二本の剣が炎を纏い、一本の刀が雷を纏い、三つの刃が交わりあう。
ギシッ、ギシッ‼
刀と刀が音を立て、祐斗はそれを見越して次の技を繰り出す。
「壱の型、『黒炎』」
祐斗は一回転して、遠心力を利用して技の威力を上げ、横切りする。
『紫電一閃』からの『黒炎』の二連撃技だ。
だが、男もそれにギリギリに対応してくる。
一筋縄ではいかない。敵もそうと斬り合ってきた冒険者だ。ただではやられない。
(ダメだ‼ もっと、もっと、速さが必要だ! 行けるか? もうひと段階……。いや、幾しかねぇーだろ‼)
祐斗は足の軸を反転させ、刀を右手に持ち、自分自身を加速させる。
(『空移』‼)
祐斗は、男の目の前から姿を消した。
「き、消えた!」
男は驚き、動揺を隠せない。
祐斗は、MAXスピードで男の背後に回り、
「弐の型、『水龍』‼」
そのまま斬った。
祐斗は男をようやく捕らえた。
「く、くそが……」
男は地面に倒れ、気を失った。
「ふぅ……」
祐斗は息を吐き、ひと段落着く。
(危なかった……。あそこで『空移』を使わなかったら俺が負けていたな)
刀を鞘に戻し、男を上から見下ろす。
予定より無駄な時間を使ってしまった。恐らく、周囲にもこの騒ぎは気づかれているだろう。早く、この場を離れなければ後々面倒になる。
祐斗は、男を残したままこの場を過ぎ去った。
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