陰と陽と草と薔薇

はとはる

交わる陰と陽

郊外から少しだけ外れたカラオケ店。

ここが俺のバイト先だ。いわゆる穴場的カラオケ店であり、有名チェーン店にしては売り上げが少ないと店長がよく嘆いている。俺はフロントで立ってるだけで給料がでるので願ったり叶ったりだが。


「もう22時か。今日は2時間はいったから大体2000円くらいか。ほんとにちょろいなこのバイト」


誰もいないフロントでひとりごちる。そろそろフリータイムの客が一斉に会計にくる時間だ。そう思った矢先に部屋から女子高生が1人でてきた。


何度も見たことのある制服。同じ高校の生徒だと気づいた。確実に校則違反だろうと言わんばかりの明るい茶髪とスカート丈。ワイシャツのボタンは2つほど開けられオシャレなのか痴女なのかわからないレベルで胸元がはだけている。正直俺の苦手なタイプだとおもった。こういう客は統計的に店員を下に見ている節がある。しかもカラオケ店といえばなぜかそれが顕著に現れるからだ。その女子高生はフロントにいる俺の前までくると伝票を机に投げてきた。カチャン、と音がフロントに響いた。


「お預かりします。2人でフリータイムですね。2160円になります」


態度が表情にでないようにポーカーフェイスで対応する。


「カズー!お金なぁーい。先出てるー」

「まじかぁー!ちょまって、いまいくー」


どうやらもう1人部屋にいるらしい。他の客が来る前に会計してほしい。待つこと1分ほど。男が慌ただしく部屋から出てきた。こちらも同じ高校だ。


ワックスでふわりとセットされた髪に整った顔。ローファーのかかとを潰してスリッパのように履いている。しかも右足と左足が逆になっているし、ズボンの裾から右側だけワイシャツが飛び出している。左右非対称がトレンドなのだろうか。まぁとにかく高校生活を謳歌してる組だということは一目でわかった。まぁ、女性とカラオケ来てる時点で一目瞭然だったが。


「店員さん、何円で…」

「あ、片倉くん。こんばんわ。2人で2160円です。」

「お、おう。結城お前ここで働いてたんだ…。2160円ちょうどで」


今一瞬名札見たな。俺はクラスメイトに名前すら覚えられていないのか…。


「まぁ週3とかだけどね。はい、ちょうどお預かりします」

「レシートいらないから。じゃあな」


そそくさと片倉君は店をでていく。ガラス越しにさっきの女子高生と並んで歩いていくのが見えた。


「あれ?片倉君ってたしか彼女いたよな…?」


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陰と陽と草と薔薇 はとはる @Hskeyhthl

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