第2話突然のプロポーズ

桜花は行くあてもないまま、仕方なくフリオに着いて行く事にした。フリオを取り囲むかのように数人の付人が周りを囲む。しかし、付人達の桜花を見つめる目はとても冷たい物だった。


「(私…何かした?…ってか、)私だって被害者だと思うんだけど…」

「ごちゃごちゃしゃべってるんじゃない!!」

「…ふぇ?」

「全く…!!」

「そう言う物騒な物向けないでほしいんだけど…」

「…こいつめ!!」

「まぁ、そう言うな。おい、桜花」

「…何?」

「本当にお前はどこから来たんだ…」

「どこからって…自宅は港区だけど…」

「港…?海の近くなのか…?」

「ううん?家は千代田の方…」

「ちよだ…??」


何故か会話が噛み合わない2人。それに、こんなゲームの様な物なのに、本気で疲れが出てくる。本当に実際歩いているかのようだった。


「分からんな…どこなんだ…」

「分かんないって…東京だよね?ここ」

「とうきょう??」

「……え?」

「東京とはどこだ?」

「…待って…?ここってどこ?」

「エルリック国だろう?何を寝ぼけている。」

「え…えるりっく????」


今度は桜花の頭の中が『??』で埋め尽くされた。それに今思えば、男性がハロウィンでもないのに、これ程までの衣装を身に付けていたらすごく目立つはずだった。それに加え、東京とは明らかに人口密度が低かった。


「てことは…ここって外国なの?」

「外国?」

「だって…日本じゃないんでしょ?」

「にほん??」

「でもどうして…?私は…ただお店にに入っただけで…」

「店?」

「…もう!繰り返さなくても平気よ!!」


その言葉を言い放った後にはやはり銃口が向けられる。それでもその人達にひるむ事なく桜花は睨み返す。そんな光景を察したフリオはため息を吐いた。


「このままでは時間がかかって仕方ないな。…おい」

「…え?」

「お前たちは後から来い。桜花、来い。」

「え、なに…」

「暴れると余計迷子になるぞ?」


そう言いながらもフリオは桜花の脇を抱えた。


「怖ければ目を瞑って居ろ」

「え?」


その言葉とほぼ同時にふわりと身体は浮き、あたりは金色の光に包まれた。怖いどころか何かを思い出したかのように桜花はその光景を見ていた。しかし、途中で目を開けていられなくなるほどの光が来たと同時にきゅっと目を閉じる。それから直に桜花の頭上で声がする。


「おい、いつまでそうしているつもりだ。」

「え?」

「とっくに着いたぞ」

「あ……今度は地面に足がついてる…」

「…?どういう事だ」

「さっきと同じ光が見えた時に渡し、ここの空に居たの。で、フリオの上に堕ちてきた。」


頭上を指さして桜花は話した。そんな桜花を見つめていたフリオ。その視線にハッと気づくと真っ赤になって舌を向いてしまった桜花。そんな桜花にフリオは問いかけた。


「桜花、今、さっきと同じ様な光、と言ったか?」

「うん。そうだけど…」

「その光を見てから飛ばされた、というのか?」

「だからそうなの」

「……ッッ」

「フリオ?」

「クク…」


喉を鳴らしてフリオは真っ直ぐに桜花を見つめ、頬に手を添えるとスッと顔を近付ける。


「ちょっ…!!何?!」


近付くフリオの身体を押し戻してキッと睨み返した。当然ながらそれに屈する事もなくフリオは笑って近付いてくる。グッと腰を抱き、顎を持ち上げたフリオとの距離はとても近くにあった。


「気に入った。」

「え?」

「……気に入った。俺の嫁になれ」

「……」

「聞こえんかったのか?」

「や…その…そうじゃなくて…」

「なら受け入れるのだな?」

「……無理!!!絶対無理!!!!」

「なぜだ。この俺の嫁になるのだぞ?」

「何と言われようと絶対に無理です!!」


そういって腕の中で桜花は暴れ出した。しかし、どれほどもがこうとも、フリオの腕はびくともしない。そのままゆっくりと近付く唇はふわりと重なった。


「…ッッ!!」


ガリ…!!


「…ッツ…」

「…最低…」


唇を噛み、一瞬ひるんだところで桜花はフリオの腕からようやくの思いですり抜けた。そのままひと言残して涙目のままその場を離れる。そんな桜花の背中を見つめてフリオはニッと口角を上げて笑っていた。


「……フ、面白い。」


そう呟き、部屋を出る桜花を見過していたのだった。


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主人公が墜ちた先は、魔王フリオの収める国だった。 桜 みやび @miyabi-sakura

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