「自殺」が、選択肢の上の方に来た人へ

笠間葉月

「自殺」が、選択肢の上の方に来た人へ

「自殺」が、選択肢の上の方に来た人へ


 もう何もしたくないかもしれないけれど、あとほんの少しだけ時間をください。とても我儘なことですが、途中まででも構いません。この文章を読んでくれる時間を、ほんの少しだけ私に下さい。

 私にあなたの行動を止める権利はありません。この文章もただの自己満足です。だからほんの少しだけ時間をください。あなたの善意に甘えさせてください。


 最初に少しだけ。

おつかれさまでした。がんばりましたね。

あなたが今まで自殺を選択しなかったことは、ただただ膨大な努力の結果です。

この文章も私も助けになるか分からないし、何より私は味方にはなれないでしょうけれど、一つだけ約束します。あなたの敵には絶対になりません。


 きっと、苦しい、とか、辛い、とか、そういう言葉で表せる感情どころじゃなかったと思います。相談相手なんていなかったかもしれません。何より、相談するのが怖くて仕方なかっただろうと、私自身の経験から思い起こされます。

 味方と思える人なんていなくて、味方だよ、と言ってくれる相手でも、信じるのが怖かった。こんな重たいことで相談に乗ってくれる友人なんているだろうか、そもそも相手は私を友人と思っていないんじゃないか。家族には余計に話せなくて、両親なんてもってのほか。いろいろなところで相談窓口みたいなものがあるけど、きっと電話したところで嫌味を言われるんだ。

 想像や妄想じゃなく、確信しているんじゃないかと思います。


 少なくとも今のあなたにとって、何より、あなたにそう考えさせた周りの人たちなのだから、味方ではありません。この人たちには相談出来ないと、そう感じたあなたが正しい。何で相談しなかったんだ、と聞かれるかもしれませんが、出来るわけがなかったじゃありませんか。

 あなたは間違ってなんかいません。「自殺」を考えることも正しいんです。しばらくは考えるだけでも辛かったことなのに、いつの間にか「自殺」が良いことのように思えているとしたら、そうなるまで考え抜いたあなたが正しくて、考え抜いたあなただけが味方です。


 だから誇ってください。今この瞬間まで、疲れ果てるまでずっと頑張ってきたあなたは誰より強い。

 「自殺」は決して弱い人が考えることじゃありません。本当に強い人が、その強さでも勝てないほどに苦しんだ時に考える選択肢です。


 何よりも。

 私の勝手な思い込みかもしれませんが、「死にたい」と考えてはいないんじゃないですか?

 「生きていたくない」と考えているんじゃありませんか?

 誰もかれも、死ぬな、と簡単に言うけれど、生きる方が難しいとどうして気付かないんだ。そんなふうに考えていたりはしませんか?


 死にたくて死ぬ人は本当に僅かだと思うんです。「自殺」という選択を実行に移せる人は、ほとんどが「生きていたくない」から「生きない」選択をしているだけなんじゃないかって。

 間違っていたらごめんなさい。あくまで私の経験からなので、全ての人に当てはまりはしないと思います。多数派かどうかも確信は持てません。

 なのでこれは、私はそこまで考えているよ、と、自己満足として表現したいだけです。私が「自殺」を考えた時、どうして死にたいと思ったの?と聞かれて、本当に辛かったから書いているだけです。もう一度、間違っていたらごめんなさい。


 それじゃあとりあえず、死に方を考えましょう。

駅のホームに飛び込んだりビルから飛び降りたりするのは簡単ですけど、死んだ後に、こんな場所で死にやがって、とか、「自殺」を選ばせた世界から馬鹿にされそうです。何よりちゃんと死ねるか微妙な気がします。

首吊りなんかはドラマでも良く見ますけど、それが出来る環境を作るのが難しそうですし、聞くところでは死んだ後にめちゃくちゃ汚くなるとか言いますし、はっきり言ってなんだか嫌です。

睡眠薬で自殺、もまことしやかに話されてますが、最近の睡眠薬は弱過ぎて全然効かないんだとか。薬の致死量より先にお腹がパンクして死ぬ、みたいな話も聞きますから、現実的ではないようです。

事件を起こすなり何なりして、っていうのは単純にやりたくありません。散々苦しめられたのに、苦しんだってことは知られずに、ただの狂った犯罪者扱いされるだなんて理不尽です。


残り、何があるかなって考えると、手首を切ってぬるま湯に浸けるっていう面倒くさい方法か、ナイフをお腹に刺してくるっと回すっていう準備はお手軽なものか、なんですよね。事実上の一択みたいなもので、ナイフでくるっ、が現実的な気がします。

 これなら、人目に付きさえしなければいつでもどこでも、筆箱にカッターナイフでも入れておけば簡単に出来ます。意外といつでも死ねるんです。


 とは言うものの、どうせならもうちょっと苦しくない方法にしたいですよね。ひとまずいつでも死ねるカッターナイフは持っておくとして、ちょっと死に場所探しでもしましょう?

 そうしてみると、これがまた意外と見つかるんです。迷惑がられず飛び降りられそうな路地裏に繋がるビルだとか、おあつらえ向きに首吊りロープをかけられそうなでっぱりだとか。

 驚くほどいつでも死ねるんです。


 だから。いや、ここまで言った後で重ねるのもあれですが……

 もう少しだけ生きてみませんか?


 とりあえずいつでも死ねるみたいですし、あなたを追い込んだ世界に中指立てて、犯罪にならない程度に仕返ししてやって、バーーーーーーーーカ!!!って叫んでやって、それで、あと一日だけ生きてみませんか?


 だって、何かムカつくじゃないですか。別に死にたいわけでもないのに、生きてるのだけ嫌にされて死ぬとか。逆に生きていたくないわけでもないのに、死なないのだけ嫌にされて生きるのやめるとか。

 何で私がこんなに苦しまなくちゃいけないんだ!って。それこそ、お前らも苦しめ!って言ってやりたいじゃないですか。


 とりあえず、死ぬ前に。いつでも死ねるのは分かってますから、そのほんの少し前に。

 犯罪にならなければ何しても良いってルールで、ほんのちょっとだけ生きてみませんか?


 ここまで読んでくれた人がいてくれるか分かりませんが、もしいてくれたなら、私はそれだけで「生きてるのやだな」と思わずに済みます。意外とそんなもの、かもしれません。これもやっぱり、間違っていたらごめんなさい。


 最後に、これを書いた理由です。

 平成30年12月に従妹が自殺しました。

 私自身も以前、未遂まではやっていたものですから、そんなのが血縁にいるから自殺出来てしまったんじゃないか、と、ずっと胸にイガグリでも押し込まれたような気分です。

 だけど何より今は、「味方になってあげられなくてごめんね」と、「あなたの味方だ、と思えるような人じゃなくてごめんね」と、そう彼女に言えないことが本当に辛いんです。荼毘に付される時の叔父叔母の声は、今も耳に張り付いているかのように鮮明に思い出せます。

 そういった経緯で、結局のところ自己満足に変わりありません。私や私の親類縁者と同じ思いをしてほしくない。それから、「自殺」しようかと悩む誰かに、ほんの少しでも理解者はいると思ってもらえたら、と。そう考えて、私に出来ることは何だろうと考えて、とどのつまりしがない物書きですから、こんなふうに文章にしようと思いました。

 下手な文章でごめんなさい。ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。

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