死季

@kiri6402

第1話

桜が舞い、芝生と小道を染め上げてゆく。中でも校舎に面する一角は、柔らかな桜色の絨毯にアクセントを加えるように鮮やかな赤色に染まっていた。桜色と赤色のコントラストが眩しいその一角に横たわるのは、女子高生の死体だった。見上げる屋上には、綺麗に揃えられたローファーの下に、淡い桜色の封筒が挟まれていた。暖かく心地よい春風がその遺書を揺らした。


青々と茂る木々のまんなかで噴水がきらめく。うだるような暑さの中、そこは楽園のように見えた。ここにも女子高生はいた。うつ伏せになり、上半身だけを噴水の底に沈めていた。溺死。なんとも季節が感じられる涼しげな死に方だと感じた。


頭上から止めどなく降ってくる色とりどりの葉は、地面につもり小山を築いた。吹く風も些か澄んできたように思える。肌寒ささえ感じる秋の風に揺られるのは死体、女子高生の死体だ。木の枝に吊るされた彼女の髪に赤や黄の落ち葉が絡まり、それは一種のオブジェのようであった。


様々な表情を見せていた木々や地面は一面真っ白に染まっていた。あんなに生き生きと茂っていた葉は枯れ落ち、きらめく水滴が踊っていた噴水は凍り、色とりどりの落ち葉の山はとうになくなってしまった。そんな生気のない風景の中、女子高生もやはり死んでいた。噴水の脇に設えられたベンチに腰掛けたまま、事切れていた。無情にも、振り続ける雪は彼女の身体を覆ってゆき、やがて見えなくなった。

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