『化けて出てやるう!』
やましん(テンパー)
『化けて出てやるう!』
* このお話は、完全なフィクショであり、既存のどのような個人、団体、あらゆる思想、宗教的思想や行事、慣行などには、まったく関係がありません。
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そう、言い残してはみたものの、ぼくは最初っからつまずいてしまたのです。
霊界から現世に、一時的に、出てゆくためには、『霊界外務大臣』の許可を得なければなりません。
ただし、『地獄』に落ちてる場合は、『地獄長官』の許可を得たうえで、さらに同様の許可が必要になります。
この『地獄』から出る場合は、手続きがなおさら煩雑で、しかも許可が出る可能性は非常に低いため、どうしても不法手段に訴えるケースが多くなるのだそうであります。
地獄の沙汰もなんとか・・・ではありませんが、まあ、実際そうらしい。と・・・。
ただ、この非合法な出現方法は、出て行く本人にも多大な負担がかかり、しかも十分な準備が出来ないため、逆に言えば、出て来られる方は、よけいに恐ろしい姿を見る羽目に陥ります。
この、非合法な手段を商売とする『鬼』さん、たちは、地獄の『鬼』としての正業の他に、違法アルバイトをやってるわけでありまして、もちろん、発見されれば、当然厳しく処罰されます。
地獄当局は、いささか、犯人を泳がせる傾向があるらしいのですが、最近は『女王様』から、目を付けられてしまったために、一斉摘発を行ったりもしたとのことです。
幸い、ぼくは、地獄でも天国でもない、『据え置き界』とか『執行猶予界』と呼ばれる、『天国』の正門の周囲にある『霊界』に居ります。
この世で、特に大きな悪事はしなかったが、あまり目覚ましい活躍も無かった人は、しばらくここで、様子見となるとのこと。
それでも、合法的に化けて出たい場合は、臨時に門の中に入って、役所の窓口で『各種許可申請』を出すことになるのです。
これが、また大事(おおごと)なのでありました。
申請書には、現在の居場所とか、現世時の名前とか、住所とか、死亡時までの職歴とか、賞罰とか、得意な事や、持っていた資格、技術などを書きます。
まあ、現世における履歴書そのものです。
しかし、これに、多数の添付書類を用意しなければなりません。
①『化けて出たい場所や相手方の名称(複数記載可能)』
②『なぜ化けて出たいかの理由書』
③『化けて出ることにより得られる効用と、出なかった場合の効用、または不効用に関する申し立て書』
④『保証人による同意書』
⑤その他、大臣から必要なものとして別途指定されるもの。
という、あたりです。
許可が出たら、現世行きの、『パスポート』が発給されるんだとか。
聞くところに寄れば、『地獄』から正規に出て行く場合に比べると、かなり許可が出る可能性は高いとか言われるそうです。
しかし、だらだらと、自分勝手に書いたのでは、まず上手くゆかないことが多く、『霊界行政書士協会』さんとか『霊界法人幽霊支援協会』さんあたりの、正式なアドヴァイザーによる『講習会』を受け、その『証明書』と、その『支援』を受けて書いた『書類』を出さないと、なかなか困難なのだそうです。
第一、基準に該当する様な『保証人』なんて(結構、基準が厳しいとか・・。)よほどの大物ならば、とにかくも、普通の『新人』には、なかなかに、いるものではありません。
こうした組織の『講習』や『アドヴァイス』をきちんと受けると、その団体が『保証人』になってくれるのだそうです。
まあ、この世の、自動車免許の取得とか、家を借りるとか、入院するとか、就職するとか、まあ、そういった、ものみたいな感じかな。
ところが、これは、もちろん、タダではありません。
結構、費用が掛かるのです。
『霊界』のことですから、お金というよりは、まあ、『功徳手当』と呼ばれる、現生における功績から計算した『お手当』が、各人に分配されておりまして、大概の亡くなったばかりの『亡者』は、そこから資金を出します。
地獄に落ちる方には、この手当は、当局に没収されてしまうので、当然ありません。
ただ、これも、聞くところによると、罪も大きいが功績も大きいというかたは、それなりの『待遇』が、あるらしいという噂はあります。
それがなにかは、わかりません。
ところで、ここでも、『非合法』に、『出る』という方法がないわけではないようです。
それなりの、『幽霊業者』さんが、門の外には、実際たくさん、あります。
お手軽ではあるのですが、帰れなくなったり、道に迷ったりするケースが、結構多いらしく、つまり、現世で迷ってしまうことになりやすいらしいです。
正規ルートの場合は、迷ったりしたら、使者が連れて帰ってくれるのだそうです。(もっとも、だからこそ、正規ルートは使いたくない! という方も、当然あるわけですよね。)
そうなると、不法出現の場合は、自力では、なかなか、もう、助からない事になります。
子供さんとか、親族とか、助けてくれるような人が、現世にいないぼくにとっては、あまりにも、リスクが大きいのです。
現世で迷うと、地獄に引き込まれる場合も、出てくるのだそうです。
ぼくが、やりたいことは、『現世』で、ぼくをいじめた、職場の上司や、若い失礼な人、たちのところに『出て』、しっかりと、『お礼』しに行きたい、ということです。
末代まで祟ってやるう! とは、思っていません。
そこで、ぼくとしては、それほどは、もらってない『お手当』を充当して、講習やら、きちんとした書類の用意を、ちゃんと、しようと思ったのです。
が、まあ、これが、何と言いますか、やはり、おおごとでありましたのです。
霊界と現生は、時間の基準が、そもそも違います。
結果から言えば、ちょっと、みな、間にあわなかったのでありました。
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『化けて出てやるう!』 やましん(テンパー) @yamashin-2
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