"箱入り娘" 闇討滅
枯山水の見事な日本庭園。
松の木が風に揺れ、雲の切れ間から月が覗いた。
ピイィーーーーーーーーー……
何者かの侵入によって響き渡ったその警報はあまりにも高音で、侵入者たちの耳には聞こえない。
屋敷に暮らす者たちはその音を聞き、その後に続くであろう展開を予想してそれぞれに支度を始めた。
子供達の、家族の、邪魔をしないために。
『本日のルールはただ一つ。母より先に、賊を殺せ』
『承知』
『分かったよ』
『はぁーい!』
“
三兄妹たちの母であり、闇討家で唯一人前に姿を現したことのない、筋金入りの箱入り娘である。
母の
子供達は警報が鳴るより前に、祖父から指示が下される前に、闇討家の敷地内に足を踏み入れた瞬間に、侵入者を殺していた。
そこへ唄いながら現れる小さな人影。
背の低いずんぐりむっくりとしたそれは、七人の、小人。
滅の盾であり、矛である小人たちはどうにも好戦的で、手にはそれぞれに武器が握られていた。
彼らは人形などではなく、滅が産まれるちょうど五年前に同時に産まれた七つ子である。
産声よりも先に、まだ産まれもしない未来の主人に忠誠を誓った。
滅が胎内に生を受けた時から闇討家に暮らし、昼夜を問わず滅を守る、七人の小人。
暗殺一家に産まれながら一度も闇討家の敷地の外へ出たことのない滅は、誰の目から見ても箱入り娘だった。
滅にスノーホワイトと名乗らせたのは、彼女の父だった。
敷地内から出ない愛娘。
七人の守人を
「坊っちゃま方は優秀でいらっしゃる」
「滅様もお喜びだ」
「我らの出番がないのは残念だが」
「致し方あるまい」
「出番などいくらでもあるわいな」
「愚か者はいくらでも沸いてくるでな」
「甘い噂に騙される輩の多いことよ」
闇討家の夜は更けていく。
賊の叫びを飲み込みながら。
暗殺一家 闇討家 南雲 皋 @nagumo-satsuki
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