7日目

 紐はあった。

 括る場所はない。

 小学生の時に母さんが好きだった真っ赤な頭をしたギタリストが、ドアノブを使っていたのを思い出した。

 母さん。そんな風に呼ぶのは頭の中とはいえ何年ぶりだろう。

 玄関は汚れてて嫌なので、しょうがなく部屋に戻ってやる事にする。


 ちくしょうやっぱりだ。やっぱり7日なのだ。

 ヤツが現れてちょうど7日目。

 休むなら、今日なんだ。


 部屋で決めるとなると、どうしてもドアの場所の都合でヤツと顔を合わせることにはなるが、仕方がない。

 ヤツを無視するように心がけながら、ゆっくりと缶のフタを開ける。プシュっと小バカにしたような音が響いたが、リアクションは一切せずにできるだけ一気に呑みこむ。

 味はやっぱり、メロンソーダのニセモノだ。

 いつから僕はニセモノを好んで飲むようになったのだろう。

 それにしても人の為と書いて偽物とは、これいかに。

 さしずめ僕は、誰の為ともならなかったのだから本物なのだろうか。


 ほいと体重を投げてぶら下がる。

 首が伸びるようで気持ちがいいような、そうでもないような。


 ヤツと目が合い、ふと笑ったような気がした。


 ーーふん。神を殺すのは、僕だ。

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