第1話 僕が強くなった日
僕は名家に生まれたわけではないが、とりわけ能力値が優れているらしい。HPやMP、攻撃力、防御力、魔法攻撃力、魔法防御力、敏捷力のどれをとっても16歳の少年にしては高すぎると教会の人に言われた。
今までそんなこと言われなかったのに
と思っていると、一緒に教会に行っていたメイに
「理由は分からなかったけど、強くなれて良かったじゃん!」
と言われた。
「う~ん、どうして突然能力値が上がったんだろう...」
「私は詳しく知らないけど、ハンリーさんのところに行って聞いてみたら?」
ハンリーさんは、とても歴史に詳しくて、僕の知らないことをなんでも教えてくれる。僕はしばらく考えて答えた。
「うん。そうしてみるよ」
ハンリーさんの家はとても大きくて、村にあるとは思えないほどの豪邸だ。そんな豪邸のドアを二回ノックする。すると中から、
「はいはーい、ちょっと待ってね」
と返事が来た。すぐにハンリーさんが顔を出した。
「お待たせケイ君。今日はなんのようだい?」
「さっき教会に行ってきたんだけど、なんだか能力値が上がっているらしくて。ハンリーさんならなにか分かると思って来たんだ」
「なるほど、能力値は一部を除いて普段の生活では変わらないからね。前例があるか調べてみるよ」
「ありがとうございます」
開けられたドアから家の中を覗くと、イスがたくさんあった。
「今日はなにかあるのですか?」
「今日は大事な会議があってね。昔この村で発見された書物の呪いについての話をするんだ」
「まさか書物って、ルイム書のことですか?」
ルイム書とは、この村で200年くらい前に発見されたという書物で、よく分からないことが書いてあったらしい。
「そう、そのルイム書。詳しくは言えないけど、ルイム書っていうのはこの世界を変えた書物なんだ」
「父から聞きました。世界の未来についてが記されているって」
「そういえばルイム書は...いや、そんなはずはない...すまない、急用を思い出した」
そういってなにかを思い出したかのように家の中に入っていった。
「お願いはできたし、家に帰るか」
どうしてだろう。寒気がする。なにかが失われてしまいそうな感覚。早く家に帰らなくちゃいけない気がする。
そう思っていると、南のほうから煙が上がった。
「うそだろ」
南には僕の家がある。父さんと母さんが心配だ。
そう思い、僕は南の方へと向かって走っていった。
魔の国 しるびあ @Silvia_514
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